今月の人【2022年8月号】パッチワーク教室を30年 中村直美さん
公益財団法人日本手芸普及協会 パッチワーク指導員
こっとん来夢主宰
中村 直美さん (75)千葉市中央区在住
「通ってくれる方がいる限り続けたい」
千葉市内でパッチワーク教室を営む中村直美さんは、指導員として今年30周年の節目を迎えた。今年6月には教室展とリーダーグループの作品展、中村さん個人の30周年記念展示会を合同開催。千葉市美術館内の会場に並べられた多くの大作は来場者を魅了した。
洋裁学校で習得した技術を生かし「こっとん来夢」を開業したのは1985年。当初は自身がデザイン・制作した綿製の洋服や小物を販売していた。その後、パッチワーク指導員の資格を取得し教室を始めたのが30年前で、公民館での講座や毎年の展示会開催など地道な活動を続けてきた中村さん。生徒数は多いときで100人を超えていたころもあったと振り返った。
教室内に展示された大きなキルトは見事な色合いで、グラデーションの繊細さやパーツの小ささに驚かされた。中村さんによると、パッチワーク制作は根気が必要で作品によっては何カ月も費やすのだとか。「模様には何千種類ものパターンがあり、その中から初心者はまずパターン通りに製図を学んで制作します。そして次のステップでは自分でデザインできるようになります。同じ模様でも人によって配色が違うので、作品には個性が出るところが魅力。8割が配色、2割が技術と言われていますから、裁縫が得意でない方でも大丈夫ですよ」と笑顔。
「こっとん来夢」では、講師免状取得コース、好きなものを制作する自由コース、パーツから手づくりする本格的な吊るし雛コースがあり、初心者から講師を目指す方まで自分に合ったコースを選択できる。現在、教室には50代から80代の約40名が在籍し、千葉市内だけでなく近隣の市や遠方では館山市から通っている生徒さんも。
常に新しいことを学び取り入れている中村さんの下には、講師免状取得後も引き続き通う方が多いという。一緒にお茶を飲んだり、おしゃべりしたりと長年楽しい時間を積み重ね、生徒さんたちにとって教室は自宅以外のもう一つの居場所になっているのだろう。写真の背景に飾られているのはフレンドシップキルト。それぞれが作った名前入りのキルトをつなぎ合わせたもので、ここで育まれた絆が感じられる作品だ。
中村さんの原動力となっているのは、ともに活動してきた生徒さんたちの存在と、編み物が好きだった祖母の思い出。家に人が集まり楽しく編み物をしている光景が今でも心に残っているという。「私のライフワークはご高齢の方にパッチワークを楽しんでもらうこと。通ってくださる方がいる限りこの教室を続けていきたい」と話した。
◇こっとん来夢
◇千葉市中央区新田町27-8
◇℡043-243-3050