「今月の人」大塚時計店 店主 大塚定さん(69)【2022年10月号】

  2022/10/6
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JR稲毛駅西口から徒歩1分ほどの場所にある大塚時計店は大正5年創業。古き良き時代の香り漂う店構えが特徴で、地元で愛され続けているお店だ。

思い出の時計が息を吹き返す 老舗時計店の技術力

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先日、腕時計の電池交換をお願いしに初めて伺った。対応してくれたのは時計職人一筋50年のベテラン、三代目店主の大塚定さん。とても気さくな方で「ひと雨来そうだよ。傘、持ってきた?」と声をかけてくれながら作業をすること数分で完了。料金は税込み750円という安さ。この価格がお客さんの間で定着しているので消費税や物価が上がっても30年以上、値上げしていないという。
 
 腕時計の電池交換と言えば、安いところでも1500円、高級時計なら2~3000円のところもあるだろう。しかし大塚時計店では「一般的な車でも高級車でも使うガソリンは同じで、ベンツだからと言って割高にはならない。それと一緒で高級時計でも使っている電池は同じ」という思いから料金は一律にしている。リーズナブルな料金でも、使用している電池は日立マクセル、セイコー、村田製作所(SONYから電池事業を譲渡)、これらの世界シェアトップクラスのメーカー商品のみ。「儲けがあるの?とお客さんには心配されますが(笑)、数をこなしてカバーしています」と話した。
 
子どものころから物を分解するのが好きだった大塚さんは、父の背中を見て育ち、家業を継ぐことは自然の流れだったと振り返った。高校卒業後、東京渋谷のヨシダで2年間修行し、その後は父親と共に店を守ってきた。
以前、店では時計や宝石販売も行っていたが、今や時計販売店は商品を幅広く取り揃えなければ生き残れない時代になったことから、修理と電池交換専門店へ切り替えた。そして店の営業日は週4日。この働き方は、1990年に56歳でセミリタイア宣言した大橋巨泉さんの影響もあるのだとか。仕事を減らし豊かに暮らす生き方に憧れ、当時30代後半だった大塚さんは「自分も50歳を過ぎたらセミリタイアして人生を楽しみたい」と考えていたという。現在は水・木・金・土が営業日で日・月・火が定休日。仕事柄、目を酷使する作業が多く身体の不調も出てくるので、休日はしっかりと身体を休めることに専念しているそう。

 来店するのは常連や口コミでの紹介がほとんどだったが、近年ではネット検索から新規客も増えてきた。さらにコロナ禍では家の片づけをする人が多いのか、引き出しの奥で眠っていた昔の時計を修理に持ち込む人も。古くてもう動かないと思われていた形見の時計や、メーカーに出しても直らないと言われた時計を修理することが多くなった。「あきらめかけていたのでしょう…直った時計を見たときのお客さんの顔から気持ちが伝わってきて、私までうれしくなります」と照れ笑い。
 
 ご近所の常連さんや、稲毛から引っ越した後も変わらず来店するファンなど、大塚さんの技術力を頼りに時計を持ち込む人が後を絶たない。

◇大塚時計店
◇千葉市稲毛区稲毛東3-8-10
◇℡:043-243-9571
◇定休日:日・月・火

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