ちばカツカンパニー☆アカデミー・なないろスタイル【2024年6月号】

  2024/6/6
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千葉で生まれ育った元「資生堂」美容部員の樋口さんが2012年に設立。数多くの民間企業や公的機関でマナーや接客力、メイクアップなどに関わる研修の講師として活躍する。

https://www.nanairostyle.jp/

マナーのベースは良心 相手に寄り添う気持ちが原点

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今回、本紙編集部記者・稲しん子がインタビューしたのは、マナー講師の樋口智香子さん。接客やコミュニケーションのプロフェッショナルです。マナーの基礎についてや、お仕事を通して感じたことなど、興味深いお話を伺ってきました。

マナーはコミュニケーションの一環

稲しん子(以下・稲)マナー研修や講演会で、日本全国を飛び回っていらっしゃいますね。

樋口さん(以下・樋)本州は隅々まで行っています。鹿児島日帰り、青森日帰りということもありました。ちゃんと数えてはいませんが、延べ200ヵ所以上は回っていると思います。

稲・傾向として、どういった業種の企業が多いのですか?

樋・美容サロン系です。エステティックサロンや脱毛サロンといった、女性を美しくするためのサービスを提供しているサロンさんが多いです。

稲・マナー研修を行う際、気をつけていらっしゃることは何でしょう?

樋・企業さんの場合なら、最初に企業理念を確認します。ホームページや会社案内パンフレット、SNSもやっていらっしゃるならそれも含めてじっくり拝読しますし、担当の方にヒアリングもします。そうして業務内容やどんな思いで事業をなさっているのか、ひと通り頭に入れた上で研修内容を組み立てます。一般的な接客マナーがすべての企業さんにマッチするとは限りません。もっとフレンドリーな接客がしたいとか、お客様との距離感を近くするためのマナーを知りたいとか、要望が様々なので、押し付けないようにしています。

稲・接客マナーで、これだけは身に付けておくべきという基本はありますか?

樋・身だしなみ・挨拶・表情・立ち居振る舞い・言葉遣い、この五大要素が接客マナーの基本になります。ビジネスマナーの場合も同じです。ただ、接客マナーの場合はこれに加えて、人間味とか温かみとか、そういった応用の部分がより大事になってきます。

稲・プラスアルファが必要になると。

樋・いらっしゃいませ、こんにちはといった基本の挨拶はベースの五原則。そこにもうひと要素、雨の日なら「お足元の悪い中ありがとうございました」と加えるのは温かみ。こちらを教育したいと皆さんおっしゃいます。

稲・ある意味コミュニケーション力を身に付けることでもありますね。

樋・仰る通りです。新入社員研修でも職場コミュニケーションを単体で扱うこともありますから。上司との関わり方、指示の受け方もコミュニケーションの一つですし、
いわゆる報連相もコミュニケーションです。

稲・すごく多岐にわたるんですね。

樋・そう、すごく広いんですよ。だから面白いのです。

稲・期間はどれくらい行うのですか?

樋・1日の場合もあるし、3日間の場合もあります。あまり長期間にはなりません。それより、接客マナーの研修を受けてくれた企業が、次はクレーム対応の研修をお願いしますと申し込まれてくるような形で、時期を変えテーマを変えつつ複数回にわたってということはあります。

稲・世間一般的に正しいと思われているマナーや作法が、実は間違っているということはありませんか?

樋・よく代表例として挙がるのが、手皿です。お箸で持ち上げた料理を口に運ぶ際、反対側の掌を下で受けるように添える形。バラエティ番組の食レポなどで、タレントさんがよくやっていますね。上品に見えるようでいて、本当はNGマナーです。

稲・そうなんですか。どうするのが正しいんでしょう?

樋・例えばお刺身なら、お箸と反対側の手でお醤油の小皿を持って食べたり、小皿がない場合は懐紙という和紙を使います。
持ち歩く方はあまりいらっしゃらないと思いますけれど、あると便利なので私は携帯しています。

稲・勉強になります。

樋・それと是非お伝えしたいのはレストランでのマナーです。
テーブルへ案内される際、男性の後を女性がついて行くと、ホールスタッフがとても誘導しづらくなるのです。女性に先に座っていただくため、
椅子を引いて待ちますでしょう? 日本人は「男性が先に立つのが当然、女性は三歩下がって」というような習慣がありますから、ついやってしまうのですけれど、レストランではレディーファーストが原則です。

マナーは法律ではない だから違反もない

稲・日本人のマナーに関する意識は世界と比べてどうなんですか?

樋・意識は高いと思います。おもてなしの文化があるし、見る目が厳しいです。一回サービスに満足した経験をすると、次にそれがなかったとき「どうして今回はないのだ」といった不満に変わってしまう。すごくシビアです。

稲・提供する側にとってはもてなしの水準を維持しなければならない苦労があるんですね。だから定期的にマナー講習を受けて、チェックし直す段階が必要になってくる、と。

樋・マナーのベースは良心です。相手の方に心地よく過ごしてもらおう、楽しんでもらおうという気持ちが原点です。でも、ある程度の作法や型が決まってしまったことで、「マナー違反」という言葉が出てきたわけですけれど、法律ではないので違反もないんですよね。挨拶一つ取っても、別にいつも元気で明るくが正解なわけではありません。その場その場の状況に応じてふさわしいマナーがあるだけで、違反かどうかで捉えるから窮屈になってしまうのだと思います。

稲・樋口さんの目から見て、「この業界、こういう職業の人たちにマナー講習を受けてほしい」と思うことはありますか?

樋・そうですね、例えば教育関係、教職員の皆さんでしょうか。

稲・学校の先生ですか。どうしてでしょう?

樋・それを感じたきっかけは、中学校の授業の一環で職場体験がありますよね。それを実施するに当たって、事前に生徒さんを対象としたマナー講習会を開催する学校が多いんです。体験させてもらう現場で、きちんと挨拶やお辞儀ができるようにとか、敬語が使えるようにとか、「いらっしゃいませ」と言えるようにとか、ビジネスマナーの基本を教えています。私としてはお仕事をご依頼いただけるのは嬉しいのですけれど、ビジネスマナーの心得があれば、学校の先生から直接ご指導いただけると思ったのです。

稲・でも意外に先生もビジネスマナーはご存じないわけですね。そう言えば私も、きちんと教わったことはなくて、社会人として何年も生きてきた中で何となく覚えてきました。若い先生だと、そういう経験も少ないから。

樋・先生方がビジネスマナー講座を受けていれば、生徒さんたちに教えることができるわけですから、受けることをお薦めしたいです。

稲・そこで樋口さんの出番だ(笑)。これからも頑張ってください。本日はありがとうございました。

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