「堀江畳店」チバカツカンパニー【2022年3月号】
発見!チバカツカンパニー 千葉の活躍企業訪問記
有限会社 堀 江 畳 店(千葉市稲毛区宮野木町)
1962年に西千葉で創業、1970年代後半に工場を宮野木へ移転し現在に至る、創業60年目の老舗畳店。寿洋さんが三代目。ワークショップや異業種とのコラボレーションなど、畳作りにとどまらない幅広い取り組みを展開中。
実は知らないことばかり…奥深い畳の世界
小紙編集部記者・稲しん子が今回訪ねたのは、千葉市稲毛区の堀江畳店さん。日本伝統の床材である畳について、取締役の堀江寿洋さんにお話を伺いました。長年慣れ親しんできた畳ですが、突き詰めれば実は知らないことばかり。畳の世界、奥が深いです。
堀江さん(以下・堀)
畳は大きく分けると畳表、畳床、畳縁の3種類の材料でできています。畳床はもともとは藁床、つまり稲から作られていました。畳表の原材料であるい草も稲も、田んぼで育つ農作物です。実際、国内産い草のほとんどを栽培する熊本県の八代では、稲とい草を二毛作しています。
稲しん子(以下・稲)無駄がないですね。
堀・ただ、畳生産の方向性は変化しています。国内で流通する天然い草のメインは中国産。しかし、その中国産もいずれは樹脂製や和紙製などの工業製品に抜かれるだろうといわれています。襖にしろ壁紙にしろ、住宅に使われる建材の宿命みたいなもの。昔は無垢材だったフローリングも、今は合板が当たり前です。
稲・い草以外の素材が主流になると、畳の概念が変わってしまいそうです。
堀・私自身も、日本の気候風土に適した建材という意味で、天然い草の畳を大事に守りたいと思っていますが、工業製品にはプラスの面もありますよ。メンテナンスが楽ですし、カビが発生しにくい。日焼けによる変色の心配も小さく、耐久性も高いです。反面、新品でも香りがなく、夏場の肌触りは天然ものに劣ります。どちらも一長一短があるんですよね。お客様にはそれぞれのメリットとデメリットをきちんとお話しして選んでもらうようにはしています。
(サンプルのカタログを見せていただく)
稲・うわぁ、きれい。カラー畳ですか。こんなに多彩な色が揃っているんですね。
堀・これが工業製品のメリットの一つです。天然ものには色づけができませんから。こういう畳を使うと、従来の和室とは異なる雰囲気が作れます。
稲・空間のコーディネートもしやすくなりますね。
堀・今の和室はリビングの続き間になっている間取りがほとんどかと思いますが、リビングと和室との連続性を演出したいという場合は、明るい色合いの畳を選ぶと一体感が出て、空間が広く見えます。
稲・天然か工業製品か、迷ってしまいそうです。
堀・要は何に重きを置いて畳を選ぶかです。経年変化を味わいと捉え、天然素材ならではの優しさを尊ぶ人もいれば、デザイン性を重視して工業製品の畳を選ぶ人もいます。今後の畳のニーズはこの二極化が進んでいくでしょう。また、子育て世代には置き畳や畳コーナーに関心を持ってもらえているようです。
稲・赤ちゃんを寝かせたり遊ばせたり、畳があれば便利ですよね。自分の暮らしに合った畳が選びやすくなっている状況なのだとしたら、もっと見直されていい気がします。
堀・そんな畳をもっと知ってもらう機会として、今はコロナ禍で休止していますが、ワークショップを何回か開催したりしています。ミニサイズの畳を実際に作ったり、畳に関するクイズに答えてもらったり、カフェで開催した時はい草入りのパンや焼き菓子をみんなで食べたり、といった趣向です。
稲・い草のパン、ですか?
堀・無農薬い草の畳を取り扱っていた時期だったので、それをPRする方法として企画しました。「食べられます」とアピールすればキャッチーだと思ったんですよね。もちろん、使用したのは畳表にするい草ではなく、食用のい草ですけれど。
稲・確かにすごいインパクトです(笑)。
堀・ワークショップ後も継続し、市内のパン屋さんや洋菓子店さんとコラボレーションする形で畳パンなどを作ってもらっています。お客様は「畳のパンって何だ」となるでしょう? そこで「実は堀江畳店とコラボした商品で」と説明してもらえるだろうという期待もありました。
稲・面白い取り組みで、とても興味深いです。今後、畳との向き合い方をどうしたいとお考えですか?
堀・家の中のメンテナンスを考えた時、畳の優先順位は低いでしょう。よほど余裕がなければ、畳替えにまで気が回りません。それをもう少し気軽に替えられるものにしたいという思いはあります。例えば、工業製品の素材と天然い草を混合した畳が登場しているので、活用してほしいです。これなら畳ならではの香りも楽しめて肌触りも心地良く、コストも抑えられる。小さなお子様のいるご家庭にもお薦めだと思います。
稲・私も畳ともっと上手に付き合いたいです。ありがとうございました。