「初回限定」「いつでも解約できる」通販の罠【2022年7月号】

  2022/7/5
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 通販で度々見かける「初回限定料金、定期縛りなし、いつでも解約」などのうたい文句。購入を申し込むといつの間にか定期購入申し込みしたことになり、解約するにも高額の解約金を請求される事案が増えていると本紙昨年7月号でも警鐘を鳴らした。
 近年、消費者センターにおいて同様の相談件数が増えたこともあり、消費者庁がこの問題を重視し、国としても対策に乗り出した。インターネットの画面上で巧みに誘導し、消費者が小さい文字をすべては読み込まないことを見越し、消費者が気が付かないうちに業者に一方的に有利な条件で商品購入契約を結ばせる横行に歯止めをかけようという動きだが、専門家からは対策が不十分であるとの声が上がっている。

増え続けるトラブル

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 1回のお試し購入で、満足できなかったことから2回目以降の購入申し込みをしなかった稲毛区の女性。頼んでいない2回目の商品が送られてきた際に業者に問い合わせたところ、初回限定で打ち切る連絡がなかった場合は自動的に定期契約コースに移行する契約になっているとして「1年以内に解約する場合は1年分の購入代金を払わないと解約できない」と言われた。
 なおも問い合わせると、「契約内容は画面に表示しており、承知の上で申し込みしたはず。裁判になっても結論は変わりませんよ」との回答があり、だまされたことに愕然としたという。
 女性が相談した弁護士が画面を確認したところ画面は消去されており、それまでの契約パターンから別のものになっていて、女性が申し込んだときの画面は確認できなかった。弁護士は、「本当は正確な表示がなかったから証拠を隠すために画面を消去した可能性もあり、悪質だ」と語っている。

特定商取引法の改正

 特定商取引法が改正され、業者は最終確認画面で取引内容を明確に表示することが必要になった。国は、これにより消費者が誤解を招かないようにできるとしているが、この弁護士は、「トラブルはなくならないだろう」と見ている。
 特定商取引法の改正は「初回限定にするためには連絡が必要である」と言ったことを明示しなければならないとしても、わざとくどくどと細かい規定を書き連ねて最後に小さい文字で「必要な表示」をすれば法律をクリアしたことになる。
 消費者は最後まで読まないのが常であるから、これでは意味がないどころか、むしろ法律上問題がないと業者を保護することになりかねず法律の改悪だと怒っている。

代金後払いの罠

 商品を後払いで購入した場合、商品が届いた後に払込用紙が送られてくる。初回限定の割引価格でないと連絡すると「販売業者と話をしてください。こちらは代金回収専門なので、販売業者からの通知に基づいて請求するだけで、代金に関する相談はお受けできません。販売業者から変更の通知がない限り請求いたします。支払いがなければ訴えることになります」と回答し、販売業者に連絡しても解約に関する部署には電話がつながりにくく、らちが明かないことが多いのが実情だ。
「このような業者の債権を一方的に取り立てようとするのは問題ではないか?」との本紙の取材に対してこの代金回収業者は、「正当な契約に基づいて回収を行っており、問題はないと考えている。あくまで双方合意の下で成立した契約のはずだ」と答えた。

後手後手の対策

回収業者からの請求メールは送信専用になっていることが大半だ。問い合わせメールを送ることはできず、電話番号も記載されていないことが多く、一般の消費者が直接、回収業者に連絡を取りにくくしているとしか考えられない。
 これは同じ資本、同じ系列の別会社が複数の会社を使い分けながら、問題のある商法で販売を続けているケースとみられる。会社の登記簿によれば役員が同一人物であったり、苗字が同じ役員が不自然に多かったりで、商品を販売するというより、うまくだまして買わせている構図が見えてくる。
 昭和の昔にはよくあった「押し売り」が形を変えて令和の世に復活したように思えるのに、政府の対応はきわめて不十分だといえよう。もっと消費者寄りの法律であるべきであり、解約が容易にできるようにすることや、違反した業者に刑事罰を適用するなどの、強い対策が求められている。とにかく「初回限定」には十分気を付ける必要があり、疑ってかかる方が身のためかもしれない。

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