主を失った空き家急増!思いの詰まった実家をどうする?【2023年2月号】
働き盛りの40代から定年を迎えようとしている年代の人々にとって、子供の頃を過ごした「実家」とはどのようなものだろうか。大人になり家庭を持った今でも当然のように年末年始や夏休みに帰省する場所として存在し続けてきた。しかし今、その実家の住人である親がいなくなってしまったとしたら…。
帰省する場所がなくなる…決断迫られる子供世代の悩み
高齢の親が施設に入るため空き家になる、独居の親の他界により住む人がいなくなってしまった、などいわゆる「実家」の不動産をどうするのか…という問題が浮き彫りになっている。
高度成長期だった昭和40年代を中心に夢のマイホームを手にした世代が高齢になり、このような問題が現実となってきた。古くから宅地開発された地域には、手入れもされず荒れ果てた住宅も見受けられるようになっている。残された子供世代にとっては既に生活も資産も親から独立し成り立っている現状をふまえると、主人不在の実家をどうにかしなければならない。
もちろん相続放棄も可能だが、多くの場合はその資産を相続することになる。しかし実際にその実家が本当に必要なのかどうか。残された家族の悩みは大きい。
※写真:古い建物を売却して地域のニーズに合う新たな開発が進んでいる現場(市内で集合住宅を建築中)
空き家のリスク
実際にその実家に住むことになれば問題はないのだが、現状そうではないケースは多いだろう。自分たちの生活が確立され、この問題が後回しになってくると決断出来ずに時間ばかりが過ぎていく。すると様々な問題も起こってくる。
仮に放置し空き家にしておくと、人の出入りがほとんどないため犯罪に巻き込まれるリスクがある。人気が無く管理が不十分だと誰でも容易に侵入できたり、放火などのリスクも出てくる。万が一、放火されたりすると、建物の消失だけでなく、空き家管理の重過失による損害賠償責任などを負うことにもなってくる。また木造住宅は、人が住まなくなり定期的な換気などが行われなくなると、建物の劣化が進み老朽化を早める。古い耐震基準の改正前に建てられた建物は耐震性が大きく不足しており台風や地震、積雪などによる倒壊の危険が高まる。所有している空き家が倒壊すれば、これもまた近隣に対し損害賠償に発展することが考えられる。このような問題があるにしても、先のことを決められず空き家のまま所有し続けるケースが多いのが現状のようだ。
現在日本の居住世帯5366万戸中、空き家の占める割合は876万戸で14%にのぼる。これは年々増え続け、最新の調査において過去最高の数字になり千葉県も12・6%となっている。国もこの空き家問題に取り組んでおり、2015年に「空家等対策特別措置法」が施行された。これにより行政から空き家の修繕、撤去などの指導が行われるようになり、所有者がこれに応じなかったり、改善されないと勧告が出される。こうなると「固定資産税の住宅用地特例措置」の優遇が受けられず、大幅に増税された固定資産税を払うことになってしまうのだ。
子供世帯の悩み
主を失ってもその空き家は子供世帯にとっては尊いものであり、多くの思い出が詰まった実家であることに間違いはない。しかし時代は核家族が進み、子供世帯にとってこのような問題は避けては通れない。
思いの詰まった実家で新たな暮らしを始める、古い建物を修繕・改築して賃貸に出し家賃収入を得る、資産価値が低下する前に売却する、選択肢はいくつかあるが、維持管理費の負担や前記のような様々な問題を考慮すると、売却により処分するケースが最も多いようだ。
思い出が詰まった実家ではあっても現状の生活においては足枷でしかない実家。売却によりその空き家を必要としている人が有効活用できれば、その地域の活性化にも繋がる。昨今の空き家問題、国による措置はあっても最後に決断するのは次の時代と向き合わなければならない子供世帯なのではないだろうか。