山林開墾が中断したままで地肌露出【2023年2月】
穴川橋から柏台小に抜ける市道沿いの斜面が開発途中で工事が止まったままなのは、危険ではないかと本紙に相談が寄せられた。現地に訪れてみると、市道に迫る高台にはマンションや住宅が立ち並んでいた。その下の20メートルほどの高さがある急な斜面には大木が生えていたほどで、開発される以前は山林の様相を呈していた土地であった。
現在は、大木は切り倒され、たくさんの切り株が残っており、灌木や雑草などは除去されたものの、斜面が途中まで開発されたままで止まっていることから、地肌があらわになっていて、建築資材らしきものが放置されている。現場は誰が見ても一目でがけ崩れの危険を感じるほどの状態である。
がけ上住宅に迫る危険放置 柏台小学校近くの市道沿い
中央区内に本店のある開発会社は土地の所有権を取得後、開発に着手している。この会社は不動産業の免許や建設業許可を取得しているが、本紙の取材に対し、現場を開発する際も近隣住民の同意を得るために説明を尽くしたとしている。しかし開発行為の許可を取得したかについては確認するとのこと。工事の中断時期や再開時期についてもわからず、担当者が不在なので詳細は不明だとの回答であった。
急な斜面の地肌をむき出しにしたままであることは、近隣住民だけではなく通行人やドライバーにも不安を与えており、工事の進捗や土砂の流出防止対策を明確にするなどの対応が求められている。崖上の住民は「同意書に印鑑がほしいと言われたが工事を中止するという説明は受けていない」「斜面が崩れるとは思わないが絶対崩れないとも言えず不安だ」と語る。また、現場は柏台小学校の近くであることから、近隣の保護者の間でも危険な場所として度々、話題にあがっている。
待たれる市の対応
熱海市で大規模な土石流が発生して以来、全国で盛土やがけの一斉点検が行われたことは記憶に新しい。今回の現場は、よりによって都市部の住宅地を走る交通量の多い、通学路にもなっている幹線道路に面した急な斜面で、その開発が途中で放置されていることには驚きしかない。大雪や大雨に見舞われると高台から一気に大量の水が流れ落ちると予想され、地肌があらわになっているだけに斜面の土がえぐり取られ、道路に流れ込むことは明らかである。
現場を管轄する土木事務所は「実際に道路に土砂が流れ込むか、その危険性がはっきりしない限り、土木事務所の所管業務としては業者の指導に乗り出すなどの対応はできない。本庁案件だ」と回答した。そして市役所本庁の開発を所管する部署は事実を把握しておらず、本紙の問い合わせで急遽、現地調査に取り掛かった。この業者は一帯の土地を取得する際、市から赤道(周囲と一体化して認定できない昔あった公の道)の払い下げを受けているから、市が知らないこと自体が考えにくいと事業関係者は話す。
斜面が崩壊するだけなら道路が通れなくなるだけで済むが、がけ上の住宅まで崩落すると大惨事となり、市に重大な責任が及びかねない。市は事業者の情報を明らかにできないから本紙はこの業者の開発に関する許認可の手続を確認できていない。市の適切な対応が求められている。