チバカツカンパニー「にじのそら学園」【2024年1月号】

  2024/1/5
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「にじのそら学園 Possibility of Learning School」
子供たちが自らの可能性を広げ、未来へ羽ばたいてほしいという理念のもと、2022年に開校。小学生・中学生世代の「自宅から出られない子供たち」の学習をサポートする。生徒の自由を尊重した、好きなことを無理なく学べるフレキシブルな授業が特色。

自宅から出られなくても学べる環境をオンラインなら作れる

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「にじのそら学園」さんはWEB会議の仕組みを使ってオンライン学習を行うフリースクールです。不登校児童が自分の居場所、自分のペースで勉強できる、新しい「学びの場」。詳しいお話をとお願いしたところ、事務局の阿部寿代さんが快く応じてくださいました。

写真:事務局の皆さん(左から小澤周平さん、阿部さん、郡山萌さん)

子供の興味関心を大切にして楽しく学べるよう工夫しています

稲しん子(以下・稲)フリースクールとは、「学校に行けなくなってしまった子供たちのための学びの場」という理解でよろしいのでしょうか?

阿部さん(以下・阿)そうですね、定義としては、不登校の子供たちに対して学習活動や教育相談などを行っている民間の施設がフリースクールということになります。

稲・オンラインを中心に授業を進めていらっしゃると聞きました。とても画期的ですね。
阿・千葉市には教育センターや青少年サポートセンターなどの公の機関だけでなく、様々な形のフリースクールがあります。フリースクールは通所型が一般的ですが、子供たちの中には家から出られない子もいます。そのような子を対象に、自宅に居ながら学ぶことができる環境が作れないかと考えたことがオンラインのフリースクールを立ち上げた主な理由です。

稲・不登校の問題って、今どのような状況なのですか?

阿・文部科学省の調査ですが、小学生・中学生ともに不登校が10年連続で増加していて、昨年度は合わせて約30万人に達し、過去最多だそうです。
コロナ禍で一斉休校になったことも拍車をかけたのかもしれません。高校生も長期欠席者が12万人を超えそのうちの約6万人が不登校。やはり過去最多です。別室登校を不登校に算入しているかどうかがこの調査結果から読み取れないので、実際はもっと多い可能性があります。

稲・コロナ禍の影響もあるんですね。

阿・テレワークやテレビ会議など、オンラインでコミュニケーションをとる方法が一般的になり、教育の現場でもGIGAスクール構想が進んでいます。今だったらオンラインのフリースクールも違和感なく受け入れられるのではと考え、開校に至りました。

稲・オンラインだからこそできると。

阿・ツールとしては、Google Meetを用いて双方向のコミュニケーションを大事にしています。対面で会わないことを不安視されることもありますが、画面越しであってもお互いの表情はわかりますし、アバターなどエフェクト機能を使ったりしながら進める授業は、生徒には楽しいと言ってもらえています。顔や声を出したくなくて画面オフにしたりミュートしたりしている子も、Google Meetのチャット機能やリアクションボタンを使用すれば感情を伝えることができるので、コミュニケーションについてはご安心いただけるかと思います。

オンラインはセーフティネット

稲・授業に使用する教材はどのような?学校と同じ教科書ですか?

阿・講師が作成した教材が基本になりますが、教科書を用いた授業をしてほしいというご要望をいただくこともあるので、その場合は生徒の手元にあるのと同じ教科書を準備します。ただ、教科書も著作物ですので、画面に教科書を映すのは公衆送信権違反ということになってしまいます。ですから私たちは出席認定を取り、画面に教科書を映しても問題ないようにしています。

稲・出席認定とは何でしょう? 市や県に申請するのですか?

阿・在籍校の授業を受けたのと同じ扱いにしてもらう認定で、千葉市の場合は学校長のご判断になります。当スクールにご入会いただいた場合、その子の籍がある学校にご挨拶に伺い、校長先生に出席認定をいただけるようお願いをしています。授業の予約および授業を行うたびに学校に連絡する場合もあれば、月に一度、授業の参加日と実施内容をレポートにまとめて報告し認定をいただく場合もあるなど、学校によって形式は異なりますが、今のところ当スクールに在籍している子供たちは出席認定をいただいています。

稲・今、講師の方が作った教材が基本と仰いましたが、カリキュラムはどのような内容なのですか?

阿・国語や社会・算数といった科目別の授業を設けています。私たちはまず「どういったことに興味関心があるか」「話題にしない方が良いことはあるか」などのご要望を聞くことから始めるようにしています。子供の興味関心があることを織り交ぜながら授業を進めることで、楽しんで学べるように工夫を凝らしています。

稲・その時々で決めていくのですね。

阿・興味がある、授業を聞いてみたいと思ってもらえないことには先に進めないので、子供の興味関心がある事柄を大事にして授業を組み立てます。好きなことだと学習意欲が湧きやすく、
理解が深まれば楽しくなるし、さらに興味の対象が広がりますからね。学びたいことを自分で選べるようにしています。逆に、「お任せします」と言われるケースもあれば、復習を含めて前回の続きからやりましょうなどとこちらから提案する場合もあります。

稲・子供に寄り添う姿勢が素敵です。

阿・子供たちのこれからに繋がる楽しい授業を行っていきたいと考えて、科目別の授業だけでなく「Pタイム」という時間を設けています。Pは「possibility(可能性)」の頭文字を取りました。プログラミングやタイピング、音楽、デザイン、あるいは手話といった授業です。また、英検やTOEICといった英語の資格取得コースもスタートさせました。

稲・学校の勉強だけが学びではありませんものね。

阿・社会で自立できる「生きる力」を養ってほしいです。私たちは子供たちそれぞれの気持ちや考え方に寄り添ったスクールでありたいと考えています。当スクールでの関わりが学ぶことのきっかけになったり、資格取得をすることで自信が持てたり、新たに興味を持てるものを発見し、それが生きる力に繋がってくれたらと思っています。

稲・いわばセーフティネットになっているのですね。

阿・そう信じたいです。私たちが受け皿となって支えてあげられたらと。

稲・どのような方が講師を務めていらっしゃるのですか?

阿・当スクールの立ち上げに携わってくださった方に集めていただいた経験豊富な方々を中心に講師陣を構成していましたが、オンラインの良さを活かして全国にも公募をかけ、今では福岡や奈良や埼玉、日本だけでなくオランダなど遠隔地の講師も集まり、様々なご要望にお応えできる体制を整えております。どの講師も子供たちに対する接し方が丁寧で、ちょっとした表情や動きを見ながら臨機応変に対応してくれています。

稲・生徒も先生も、どこにいてもいいんですね。

阿・オンラインの強みはどこからでも繋がれること。今は千葉市在住の子供たちが在籍していますが、地域を問わず全国の子供たちを対象に手を差し伸べる範囲を広げたいと考えています。

稲・ぜひ実現してほしいです。今日はありがとうございました。

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千葉市中央区・千葉みなと発 『ローカルをサブカルでリリカルに!』 千葉市で暮らす人々のライフスタイル発信メディアです。
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