No.37 お金には換えられない「いまここ」を味わい楽しんでもらいたい「醤油しぼり師」山野邉暁さん　夷隅郡大多喜町

2022/12/30


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12月26日（月）幕張ブルーワリーにてお醤油しぼりを体験をしてきました。
私自身、味噌づくりを始めて3年。1年ほど前から、お醤油づくりもやってみたいなと、思っていたところ、お醤油しぼり師の山野邉暁さんと出逢いました。

まずは山野邉さんにお醤油の作り方をお聞きしました。
今回のお醤油は一般的な小麦を使ったものではなく、米と大豆を麴にし、塩水と混ぜ、年間20回程天地返しを繰り返して作られたものです。しぼる前の状態を「もろみ」と呼びます。

樽の中を竹製のささらで混ぜながらもろみにお湯を加え、味を決めていきます。
その場にいるみんなで味見をしながら、調整します。

味が決まったら、いよいよしぼりの作業。醤油しぼり袋を槽（ふね）と呼ばれる木製の装置にセットし、柄杓で樽のそこからもろみをすくい、静かに袋に移していきます。
槽の形に添うように、もろみの入った袋を広げると、すぐにちょろちょろとお醤油が流れ出てきました。参加者で協力しながら、袋にもろみを詰めて、槽の中に積み重ねます。
もちろん、私も挑戦させて頂きました。柄杓から袋にもろみを移す時には、熟成した香りや保存に必要なアルコール分が飛ぶのを防ぐため、静かに移すのがポイントだそうです。
全てのもろみを槽に移し終え、重しをして更にしぼっていきます。

しぼり始めのお醤油と、袋が積み重ねられた状態で出てきたお醤油は、色味が違ってきます。
始めは袋から漏れていた不純物が、積み重なった袋がフィルターの役目をして、徐々に透き通っていくのだそう。
お醤油しぼりの現場でしか味わうことのできない、火入れ前の生醤油を卵がけご飯や釜揚げうどんにかけて、みんなで味見をしました。卵がけご飯初体験の娘も大絶賛。山野邉さんが、しらすにかけると最高に美味しいと、教えて下さいました。

続いてしぼりたての生醤油を窯に移し、80℃で20分火入れをしていきます。
これによって、普段目にするような濃い色味になり、不純物は固まり、殺菌され、香りも変わってくるんだそうです。
最近では都会のマンションに呼ばれて、お醤油をしぼる事もあるそうなんですが、その際の火入れはご家庭のガスコンロをつかいます。窯で薪を燃やして行う火入れには、ガスコンロで行うそれには出せない風味が生まれるのだとか。そこには、対話をしながら作り上げる豊かさがあるように感じました。

山野邉さんがお醤油しぼり師として活動を始めたのは6年前の2016年。農業研修をしていた鴨川でお醤油づくりに参加したことをきっかけに、2012年から自家用にお醤油づくりを始めました。なんと山野邉さんのお子さんは生まれた時から手作りのお醤油が当たり前のようにご自宅にあったんだそうです。まさに食育ですね。
そのうちに、周辺でもお醤油を手作りしたいという声が高まっていき、1年かけてしぼり師の仕事を学び、「上総手作り醤油の会」にてしぼり師として活動するようになりました。

始めは必要にかられてしぼり師になった山野邉さんが今、お醤油しぼりの体験を通じて、参加者に伝えたい事をお聞きしました。
「1年間、手を加えてお世話をしてきたものが完成する喜び、この場の楽しい雰囲気やわくわくを一緒に味わい、お金で交換することのできない体験をしてほしいと思っています。」
一緒に体験した娘も終始笑顔で作業をして、にこにこしながらしぼりたてのお醤油を味わっていました。私自身もクリスマス明けで職業柄疲れ果てていたはずが、とにかく体験できることが嬉しくて、楽しく美味しい時間を過ごす事ができました。
今回のお醤油樽のオーナーEarthMarketPlaceの野田悦子さんお勧め、火入れの時に出たあくをセロリにかけた一品。これがまた、口の中に余韻が残る何とも言えない美味しさ。まさに「いまここ」でしか味わえない逸品でした。

実は山野邉さんは「いまここ園」というクッキー屋さんでもあります。国産小麦や厳選したオーガニック素材を使って「カラダにやさしくておいしいおやつ」を手作りし、イベントなどで販売しています。醤油しぼり師ならではの「もろみ粕」を使ったクッキーは私もお気に入りです。まずは美味しいクッキーを味わいながら、お醤油づくりを身近に感じてみてはいかがですか？
取材・ライター　川﨑佐知子
＊掲載内容は取材日時点のものです。
（取材日2022.12.26）