「大好き」を大切にする気持ちが、地域に愛されるお菓子屋さんをつくる【パティシエールナオ|前編】
長柄町の茂原街道沿いにお店を構えるパティシエールナオ。
金曜日から日曜日までの3日間オープンしている、こじんまりとしたお菓子屋さんです。
店主は、窪木尚さん(以下、なおさん)。
国内外でお菓子作りの修行をしてきた熟練のパティシエールです。
幼いころをロンドン、千葉市で過ごした後、小学5年生から高校時代までを長柄町で過ごし、現在は長柄町でご主人、お子さんと一緒に暮らしながら、自身の工房でお菓子を作っています。
今回は、なおさんがパティシエールとなり、長柄町に自身のお店をオープンさせた経緯をご紹介していきます。
ショップカードとパティシエールナオのオリジナル缶クッキー
幼いころロンドンで出会った「ケーキ」
幼いころから甘いものが大好きだったというなおさん。
しかし、今と比べて甘いお菓子はあまり身近ではなく、めったに食べられないものでした。
「私が育った昭和40年代のお菓子って、お豆とかおせんべいみたいなものばっかりなんです。
たまにお中元でゴーフルなんかをもらうことがあっても、冷蔵庫の上とか高いところに置かれてしまうから手も届かなくて。
身体が甘いものを欲しているのに全然ない!っていう時代でした。」
そんななおさんは4歳のとき、ご家族のお仕事の都合でイギリスのロンドンへ渡ることになりました。
ロンドンでは週末にホームパーティーを楽しむ習慣があります。
なおさんの家族も、仕事で付き合いのある人々を毎週のように招き、なおさんのお母さんは習ってきた料理をふるまっていました。
「母が作ってくれたものの中にケーキがあったんです。特にブルーベリーチーズケーキが好きでしたね。本当に、ヨーロッパのお菓子っていうものがキラキラして見えました。」
このケーキとの運命の出会いが原体験となり、なおさんはパティシエールを目指すようになります。
長柄町の長生ファーム産のブルーベリーを使ったムース。
幼いころに見たブルーベリーチーズケーキの面影が…あるのかもしれません
大好きなことを追い求められるありがたみ
高校卒業後、なおさんは大阪の辻製菓専門学校に進学しました。
専門学生時代には同専門学校のフランス校に1年間留学、その後も東京や横浜のお菓子屋さんに勤めながら、ドイツやスイス、イギリスなど海外での短期研修にも行っています。
熱心にお菓子作りを学び続けるなおさん。
その背景には、専門学生時代に下宿をさせてもらっていた親戚のおじさんの言葉があるといいます。
「おじさんには、『今の人は自分の好きなことができるし、好きな人生が選べるからいいよね』といつも言われていました。
私の親の世代って、戦争を経験しているんです。
親戚のおじさんも戦争で中学、高校には思うように通えませんでした。本当だったら大学にも行けるような優秀な人なんだけど、「今の自分にできること」で食べていくしかないから、おじさんはタクシーの運転手を一生の商いにしてきたんです。
そういうおじさんの人生を見てきたからこそ、自分が好きなことを究めて仕事にできるありがたみは、きちんと噛みしめていきたいなと思うようになりました。」
この場所で、自分にしかできないお菓子作りがしたい
なおさんは2001年に長柄町で親の代から理容店を営んでいるご主人と結婚し、2人の子どもに恵まれました。
そんななおさんが長柄町で自身のお店を開いたのは今から6年前。
ご主人の理容店の隣に工房を作りました。
お店のショーウィンドウには旬のくだものや野菜を使った色とりどりのケーキが並びます。
もちろん、長柄町産のいちごやブドウ、ブルーベリーを使ったケーキが登場することも。
ある日のショーウィンドウ
また、なおさんのつくるケーキの中でも特に注目したいのが
誕生日ケーキやウエディングケーキのような、
特別な日に贈るケーキです。
贈る相手の人柄や好きなものをちりばめた、
まさにこの世に一つしかない美しいケーキを作ります。
クロード・モネの絵から着想を得た誕生日ケーキ
「特別なケーキを作るときは、色んな話を聞くようにしています。
新型コロナで学校にも行けず部屋に閉じこもっている子どもたちに部屋から出てきてもらえる時間を作りたいとか、普段なかなか会えないお母さんにケーキを送りたいとか。
そういう願いを聞いていると、大切な人に対する思いに応えたいと思います。」
そんなパティシエールナオのケーキは町民や近隣の町に住む方にも大人気で、昨年から始めたInstagramのおかげで更にお客さんが増えてきています。
しかし、今よりお店の規模を大きくするつもりはないのだと言います。
「お店を大きくしたり、工場化したりしないからこそできることもあるんです。
オーダーメイドの誕生日ケーキを丁寧に作れるというのもそうですし、出来立てで、なるべく化学調味料や添加物・保存料を使わないお菓子を届けることができます。
だから、小さくやっていくことで、自分にしかできないお菓子作りをしていきたいなと思います。」
後編もお楽しみに!
いかがでしたか?
お菓子が大好きという気持ちと、好きなものを究められるありがたみを感じているからこそ、今のなおさんのお菓子作りのスタイルがあることが印象的でした。
また、大好きな人やお世話になっている人に贈るものでもあるからこそ、パティシエールナオのケーキはこだわって作られてています。
「大好き」の気持ちを大切にすることが、なおさんのお店やなおさんが作るお菓子を
素敵なものにしているのかもしれません。
また、今回の取材では自身が育った場所として、また家族とともに暮らす場所として、
なおさんの長柄町に対する課題感やこれからの期待についてもたくさんお話を聞くことができました。
後編では、なおさんの長柄町に対する思いをご紹介していきます。
どうぞお楽しみに!
そして、なおさんのケーキが食べたくて仕方がなくなってしまった方は、ぜひお店に足を運んでみてくださいね!
(取材:長柄町ブランドロゴ制作ワークショップ参加者)
※取材はオンラインで行われました
パティシエールナオ Patissiere Nao
住所|〒297-0235 千葉県長生郡長柄町皿木172−23
TEL|0475-35-1412
Instgram https://www.instagram.com/patissiere_nao/?hl=ja
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