発見!チバカツカンパニー 千葉の活躍企業訪問記【2022年2月号】
株式会社 オーエックスエンジニアリング
テニスの国枝慎吾選手や上地結衣選手、陸上の佐藤友祈選手など大勢のパラリンピック・メダリストをサポートする競技用車椅子のトップメーカーの一つ。オートバイの事故で車椅子生活になった創業者・石井重行氏が、既存の車椅子に納得できず、自ら作り始めたことを出発点として、1988年、千葉市に本社を設立。車椅子製造事業に進出する。
株式会社 オーエックスエンジニアリング
小紙編集部記者・稲しん子が、千葉市で活躍する個性的な企業を訪ね、躍進の理由を探る「チバカツカンパニー」シリーズ。第1回は、千葉市若葉区の競技用車椅子メーカー・オーエックスエンジニアリングさんです。広報室の櫻田太郎さんから、業界の先端を走る企業ならではの興味深いお話が伺えました。
櫻田さん(以下・櫻)私たちはもともとオートバイの販売店で、レース活動もしていました。エンジンを開発したり部品を製造したりするファクトリーでもあったのです。当時は東京の江戸川区が拠点でしたが、研究開発や工場としての敷地が必要になったため、1988年にここへ移転したのです。創業者が千葉市出身だったという縁もありました。
稲しん子(以下・稲)ああ、なるほど。周囲は住宅街ではありませんものね。
櫻・移転当時は一面の森と畑だったようです。会社の看板は掲げていなかったので、謎の施設に見えたでしょうね。その頃はエンジンや部品の開発のために発売前のオートバイが持ち込まれていたため、雑誌社に写真を撮られたりすると大変です。だからあえて存在感を消していました。
稲・オートバイから競技用車椅子の分野に進出するきっかけは何だったのですか?
櫻・車椅子製造に業種転換する時点で、競技用車椅子を作ることは決まっていました。オートバイの販売店兼パーツメーカーが車椅子を作るというだけでは注目されません。まず競技で当社の車椅子を使った選手に良い成績を残してもらおう、と。憧れている選手が使っているシューズやラケットなら自分も使いたいと思うものでしょう? 車椅子も同じことです。
稲・使ってもらうことで認知を広げるのですね。では、競技用車椅子を設計開発する上で、最も大事なことは何でしょう?
櫻・車椅子を必要とされる方は一人ひとり事情が異なります。競技の違いや体格、障害のある部位、プレイスタイルもそれぞれなので、車椅子はすべてオーダーメイド。一人ひとりの話をよく聞いて、要望を理解する必要があります。具体的には、設計図に落とし込む前の採寸の段階がとても大事なのです。
稲・そういったノウハウを日常用の車椅子にフィードバックしていくのですか?
櫻・日常用も基本的にはオーダーメイドですけど、あらかじめ用途別やサイズ別、デザイン別に部品を在庫しておき、注文に応じてそれらを組み合わせています。あとから別の部品をつけ替えることも容易ですが、やはり使う人の要望を細かく聞き取る必要がある点は、競技用と同じです。
稲・日常用も使う人それぞれの生活に深く踏み込む必要があるのはわかります。学校に行ったり職場に行ったり、それこそ朝起きてから寝るまで、一日中使うものですし。
櫻・ですから乗り心地の快適さも重要ですし、機動性の高さも大事。それと見た目の良さですね。ファッションと同じように、気に入った色やデザインであれば、お出かけも楽しくなるはず。外出したくなるような製品であることは大切だと思います。
稲・競技用車椅子はいわばレーシングカーで、日常用は普通乗用車という感じなのかと思いますが、根本的には何が違うんですか?
櫻・競技用車椅子は選手それぞれの目標達成のため、軽さや剛性、フィット感を重視し、思い通りのプレーができるように作っています。日常用は使いやすさと耐久性重視。もしトラブルが発生したら、外出できない、あるいは帰宅できないといった事態になってしまいかねませんから。
稲・子供向けの車椅子にも注力されているようですが、どんな配慮が必要となりますか?
櫻・私たちの製品はオーダーメイドですから、子供用に小さくつくることは可能なんです。しかしそれだと特別料金が掛かり、大人用より高価になってしまいます。成長に合わせて買い替えることも考えると、コストの負担は抑えたい。そこで、小さいサイズ・大きいサイズを選んでもらう既製タイプにしました。身体を動かすことの楽しさを知ってもらうための、いわば入口となる製品です。
稲・素敵です。子供の時にオーエックスと出会ってスポーツを始めた人は、きっと大人になってもオーエックスを使い続けてくれるでしょう。
櫻・将来そうなってくれればいいなと思っています。
稲・将来と言えば、経営理念として「未来を開発する」という言葉を掲げていらっしゃいます。どのような未来を目標とされているのか教えてください。
櫻・私たちが考えている目標は、車椅子を必要とされる方が新たな体験をしていただけるような製品づくりを拡充することです。ふだんできなかったことができるようになるとか、お出かけしても疲れないとか、日常の中で小さな幸せが一つずつ増えていけば、生活はより快適で豊かになっていく。そんな製品作りを進めていきたいと思っています。
稲・期待しています。今日はありがとうございました!