NO.82 築294年の茅葺き民家の庭に咲く牡丹と春の花たち 《茂原牡丹園》 

  2024/4/20
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上総の里山景観、房総丘陵を背景にした古民家の広い庭園が「茂原牡丹園」として、一般公開されています。

2代目当主の加藤さんにお話を伺いながら園内を案内していただきました。
造園業を営み庭の鑑定士をしていた先代のお父様が、福島県にある牡丹園を訪れた時にその美しさに魅了されたことがきっかけで自宅の庭で牡丹栽培を始め、その後「茂原牡丹園」として昭和58年に開園されました。

現在は5000㎡の敷地に約200種2000株の牡丹と500株の芍薬が栽培されています。

最大の見所は日本の歴史を感じる茅葺き屋根の農家建築

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母屋は寄棟造の木造平屋建、茅葺屋根の農家建築。上総地方の農家の伝統的な間取りです。
建築年代は、江戸時代中期(享保15年 西暦1730年)築294年と伝えられているそうです。

長屋門も寄棟造の木造平屋建、茅葺屋根で 江戸時代後期(天保8年 西暦1837年)に建築されたもの(築187年)と伝えられているそうです。

どちらも記録が残っており、国の登録有形文化財に指定されている歴史的建造物です。
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お花見ワンポイント

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牡丹には早咲き種・中咲き種・遅咲き種があります。
訪れるタイミングで違う花が楽しめるということです。

気温が高くなる日中よりも、朝方か夕方の涼しい時間帯の方がより綺麗な牡丹を鑑賞することが出来て、朝露にぬれる牡丹はまた格別に美しいそうです。
開園時間は8:00〜ですが、早朝に写真を撮りたい方などは相談にのってくださるそうなので問い合わせてみてはいかがでしょうか。

販売されている牡丹の苗木も大輪の花が咲いているので、お好みの品種を探しながら栽培ポイントなどを聞くのも楽しいですね。

たくさんある品種の中で当主加藤さんがお好きな品種を伺って、蕾から花まで長く楽しめるピンクの「福雲(ふくぐも)」 黄色い大輪の花が咲き香りが良い「黄冠(おうかん)」 黄緑色の蕾から白花に変化する「まりも」という品種を教えていただきました。
これから咲く品種とのこと、ぜひお出かけの際は探してみてください。
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新緑に映える春の花々

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牡丹の花の見頃に合わせて、春に花咲く庭木や草花を集めて植栽されています。
芍薬・シャクナゲ・ツツジ・藤・大手毬・小手毬・モッコウバラ…咲き競うように次々に花がさくので、3週間の開催期間中は庭全体の表情や色合いの変化を楽しめます。

多種多様な植物の中でも見どころは、大きなハンカチの木。3本あります。
こんな大きなハンカチの木は初めて見ましたが、それもそのはず 先代当主が中国から輸入が解禁になった年に植栽したので、日本で最大級の大きさなのではないかとおっしゃっていました。
こちらは植物が好きな人は一見の価値あり。
開催期間の後半になると珍しい形の白い花が見頃になるそうです。

1シーズンに3回くらい足を運ぶお客様もいらっしゃるそうですが納得ですね。
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母屋(茶屋)で牡丹を眺めてひとやすみ

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母屋は喫茶スペースが設けられており、ソフトクリーム、あんみつやソフトドリンクなどの軽食をいただけます。

庭園をぐるり一周、山の傾斜で階段を歩いた後は、あんみつをいただきながら外の景色を眺めてちょっとひとやすみ。
縁側に座ってお茶をしながら庭の草花を愛でる、時折ウグイスが鳴く声が聞こえて、これもまた風情があって心地よいひとときでした。
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園内各所に見どころあり

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母屋の裏には室(山腹に掘った岩むろ 洞穴)が残っています。ご先祖が食物を貯蔵したりするために使っていたのでしょう。
室の中に入ってみたら、中からのぞく外の景色も素敵でした。

長屋門はギャラリーになっていて牡丹の絵画(油絵や版画や蝋結染など)が展示されています。
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立てば芍薬 座れば牡丹…

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ここでちょこっと豆知識。
「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」
日本にはそんな言葉がありますよね。

芍薬(しゃくやく)は、すらりと伸びた茎の先端に美しい花を咲かせるため、すらりとした美しい女性をたとえ、 牡丹(ボタン)は枝分かれした横向きの枝に花をつけるため、まるで美しい女性が座っているかのように見えるさまを表現した言葉と言われています。


「立てば芍薬」の「立てば」は、イライラと気の立っている状態。このような時に、鎮痛・鎮痙作用のある芍薬の入った生薬が良い、「座れば牡丹」は、座ってばかりいる人は血液の巡りが悪くなり血が滞るため、血流を改善する牡丹の入った生薬が良い…ということで、この言葉は元来漢方薬の生薬の用い方を例えたものだとも言われています。

牡丹は美しい観賞花でもあり、薬草でもあるのです。
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より魅力的な庭園へ新たな可能性

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手入れの行き届いた園内に 植物への愛があふれていました。

園内で植物の名前を聞くとスタッフさんたちがとても親切朗らかで笑顔で対応してくださったのがとても印象的で、気持ちの良い1日を過ごせました。

2代目を継承して21年目の加藤さんは、歴史あるこの場所を守り、長い時間をかけてより魅力的な庭園に育ててきたのだと感じました。

今後は牡丹のオフシーズンも年間を通してこの場所を活用することも考えていらっしゃるそうです。
イベント開催や飲食店営業など、新たな可能性を感じるこの場所の今後が楽しみです。

来年もまたその次の年も是非訪問したいと思いました。
自然豊かな庭園でゆったり過ごすひととき、心が潤う贅沢さを味わえる房総の名所として これからも毎年たくさんの人を楽しませてくれることでしょう。
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取材・ライター:黒沼美保
※掲載内容は取材日時点のものです。
(取材日 2024.4月)
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DATA

茂原牡丹園
〜里山の茅葺き民家と素朴な自然庭園〜

茂原市山崎210
0475-22-4224

2024年4月17日〜5月6日(期間中無休)
8:00〜18:00開園

入園料: 大人1000円 中学生以下無料
駐車場: 無料

オーナー: 加藤寛さん

【HP】  http://www.mahimahi.co.jp/botanen/
【Blog 】  http://mobabota.exblog.jp/
もばらって編集部
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茂原市周辺を拠点に仕事や地域活動などに取り組む女性たちが集まって編集部を結成! 茂原市&周辺地域の人、物、場所、イベント、ニュースなど...
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