障がいを抱えている方が『明るく楽しく社会生活が送れる施設』【グッドライフ】前編
茨城県神栖市を中心に、障がいを抱えている方の就労支援施設やグループホームを運営されている株式会社グッドライフさん。
施設の運営はもちろんのこと、毎週末茨城県・千葉県内各地において、マルシェ出店やワークショップも開催されております。
- 就労支援事業所とは?
- 就労支援とマルシェ出店の関係とは?
- 毎日情報発信を行っている理由とは?
「就労支援事業所」からイメージされる活動だけでなく幅広く活動をされている理由なども併せて、常務の髙根由起子さん、施設長の立原ゆかりさん、支援員の熱田一美さんにお話を伺いました。(前編)
株式会社グッドライフとは
グッドライフは、働く意欲を持ちながらも雇用されることが困難な人のために、作業を通じその人たちの適正を見出し、社会生活に溶け込んで楽しい生きがいのある毎日が過ごせることを目的とした施設です。
グッドライフでは、障がいを抱えている方に対し、
- 「生活指導」
- 「自立支援」
- 「就労移行支援」
- 「就労継続支援B型」
を行い利用者様が社会に踏み出していけるよう、お手伝いをしています。
2011年4月に開業し、去年でちょうど10年を迎えて今年11年目になります。
創業したのはその前年、2010年12月だったんですが、2011年4月から利用者様を迎えいれるために先に立ち上げて開業をしたのですが、そういう時の2011年3月に震災が起きました。
社長である父の話だと、「さあこれから」という時の3月11日に震災が起きましたし、開業した4月の時も余震がまだすごかった時なので、利用予定の方の親御さんから「まだ外に出すのが怖い」といった理由で入所を見送る方もいらっしゃったので、すっからかんの状態からのスタートだったそうです。
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そのような状態でのスタートだったので、「これは運営していけるのか?大丈夫なのか?」という状況だったんですが、そうこうしてる間に利用者様も徐々に戻ってきてくれまして、これまで10年間運営できております。
この2年ほども、このような状況で気が気ではないですが、なんとか乗り切っている感じです。
最初は、神栖市の中でも今施設があるこの場所ではなく、土合地区というもう少し銚子寄りのところに施設がありまして、その後こちらの日川の場所に移転しました。
その間に、潮来市さんから、幼稚園の跡地で就労支援施設をされませんか、と、お声がけしていただきまして潮来市に就労支援施設をオープンしました。
そして、就労支援ももちろん大切なのですが、生活する場所というのが一番大事ですので、グループホームが立ち上がりました。
さらに、神栖市と潮来市の実績を見ていただいた、香取市さんから、小見川北小学校分校の跡地で事業所をお願いできないかとお声をかけていただきまして香取市においても就労支援事業所を運営しております。
自治体さんから声をかけていただいたこともあり、エリアが増え、現在グッドライフで運営しているのは、通所型施設が4施設、グループホームという利用者様が一緒に暮らしているしている施設が2施設の合わせて6施設ですね。
未来ある人への願いを込めたモチーフ
今は障がいを抱えている方に対して理解が得られるようになってきていますが、障がいを抱えている方がいるご家庭はその方がお家の中で塞ぎ込んでしまうというケースがまだまだ多いと思うんですね。
しかし、18歳といえば、これからの未来がある人たちですから、上を向いて歩いてほしいということで、グッドライフのモチーフは「青空」と「ひまわり」になりました。
利用者様の負担にならない定員数
就労の事業所の定員は20人です。
建物の面積で利用者様の人数が決まるので、廃校となった小見川北小学校分校の校舎を利用して運営している香取の事業所は、面積だけで考えれば人数を増やすことは可能なのですが、人数が多すぎると支援員が必要になるのももちろんですが、利用者様の負担になってしまうので、定員を増やすということは特に行なっていません。
一人の支援員につき、利用者様を何人まで見ることができるというのは法律で決まっているのですが、当施設では一人の支援員が利用者様を見る人数を少なくしているんです。
その部分でも利用者様の負担を減らせるようにしています。
手厚さがあるから就職される方も多いし、就職されてからも頑張れるようなんですね。
通ってる間に、利用者様は、おそらく強い気持ちになっていくというか、人と人を信頼できるようになるんでしょうね。
就労支援施設を運営をするきっかけとは
私(高根常務)の父と母(現社長および専務)は会社員を経て居酒屋を経営しておりました。
その後お弁当屋さんにシフトしていきまして、お弁当屋さんを始めて数年経った頃に、介護食の有名な工場さんから「これからは介護の時代になるので介護食をされてみてはいかがですか?」お話をいただきまして。
工場で一括して作りまして、それを真空パックにしたものを介護施設に送り届けるというもので、そのノウハウを教えていただき、介護食の方を始めたんですね。
介護食の事業の関係で、県の方とお話しする機会があったのですが、その際に、茨城県の中でもこの鹿行地区の神栖市というのは特に障がいを抱えている方が非常に多いという事実を知りました。
そのお話を聞き、障がいを抱えている方の親御さんが日中に少しでも自分の時間を作れるように、こういった事業所を作りたいというきっかけで始まったんです。
創業者である父は、現在83歳なんですよ。
変わり続ける障がいを抱えている方の活動
就労支援事業所に通っている利用者様は、2年間訓練して就職しましょうという目的で通所される方もいらっしゃいますが、2年間という区切りもなくずっと通い続けていただいている方もいらっしゃいます。
以前グッドライフでも、利用者様が「日中活動するために何か軽作業させましょう」といった感じでしたので、本当にそれぐらいの軽作業でした。
利用者様が一生懸命作ったものでも、例えば三百円くらいの原価程度で売られていました。
しかし、そうではなく、「利用者様は商品を作ることで仕事というか労働をして賃金を貰う」ということや、今は難しいですけど「コミュニケーション能力も養う」ということ、それらも含めての就労支援という感じに、障がいを抱えている方の活動っていうのは変わってきてますね。
さまざまな経験が就労支援の役に立つ
グッドライフでは給食を食べています。今はコロナ禍なのでやってないんですけど、その配膳を以前は当番制で行っていました。
この経験が直接就職に結びつくわけではないのですが、病院食の配膳のお仕事に就職された方もいたりするんですよ。
清掃なども一緒にやってるんですが、日常こう当たり前に行うような、
- 配膳
- 清掃
- 作品作り
- 内職
といったものをやることによって利用者様が色んな経験をしますよね。
それらを経て就職に結び付くというのもあるので、グッドライフでは色んな経験をしてもらって、就職であったり、今後の人生に役立つであろうということで、さまざまな活動を一緒にしていますね。
利用者様の様子
利用者様は特別支援学校高等部を卒業されてから来られる方が多いです。
この神栖の事業所は18歳から一番上は60歳の方になります。潮来の事業所には70歳近くの方も通われているのですが、以前は60歳くらいまでしかこのような事業所には入れなかったんですね。その年齢を過ぎてしまうと、高齢者施設の方へ入所してもらうという形になっていました。
しかし、昨今は高齢者施設もいっぱいになっているので、就労支援施設に通うことができる方は、こちらで活動したり生活したりしましょうということになっておりますので、年齢の上の方だと70歳近くまで通われていますね
通所型の施設のほかに、グループホームという共同生活を送る施設があるんですが、そこは18名の方が一緒に生活をしています。
「障がいを抱えている方」というと、かつては知的障害の方が多かったですよね。しかし、今は知的障害だけじゃなく発達障害と精神障害の方も増えています。
様々な障がいを抱えている方がいます
褒めたり、叱ったり、なだめたり、気分転換で何かしてみたり。
支援員はのせ方がとてもうまいですね。
利用者様が、毎日その日を笑顔で過ごしてくれて、「また明日もグッドライフに行きたい」って思えるように支援してくれています。
そのおかげで、精神障害の方ですと、一般的には通所の日数が少なかったりするのですが、最近はそういった方達も通所したい日数が増えてきており、これまで1日だけ通所していた方も、週に3日通所されるようになってきたりしています。
地域全体で障がいを抱えている方を支援しています
こういった就労支援事業所を利用するために、行政には相談支援の方や就業センターさんがいます。
私たちの事業所だけで活動していると言うより、自治体さんだとかそのような間に入ってくさる方達とみんなで、障がいを抱えている方を支援しているんですよ。地域でサポートしていくという感じです。人数としては、この会議室に埋まるぐらいですかね。
事業所での活動を経て就労される方
就職活動も「就労支援員」が支援しています。就業センターさんという、利用者様と企業様の間にいる方に紹介を受けて、就職をサポートしています。
一般の人が行くような就職面接会のようなものがありまして、神栖であれば、鹿島セントラルホテルさんで障がいを抱えている方を雇用したい企業様が集まります。
就業希望の利用者様は、自分で申し込んで面接に行くんですよ。私もそれに同行したことがあるんですが、普通に面接を行うんです。これまで就職された方を数名送り出してます。大きな病院に就職されて、今でも継続して働いている方もいるんですよ。
障がいを抱えている方を雇用をされている企業様は増えているので、就職される方も多くなってきたのですが、地域によっては、通勤問題の問題があるんですよね。自分で車を運転できれば就職もできやすくなるんですが、そうじゃないとなかなか難しいっていうのもありますね。
就職した後もサポートは続けています
就職された方のサポートは、就業センターさんと一緒に行っています。
それもあり、就職されて最初の頃は、一週間に一回くらい職場まで巡回し、企業様と利用者様のその橋渡しというようなことを行っています。
利用者様のサポートという意味もあるのですが、企業様の方も、初めて障がいを抱えている方の雇用をされる場合は、障害を抱えている方とどう接していいか、どこまで言っていいのか、といったことがつかめなかったりするんですね。
そういった場合も、企業様側の意見を聞いたり、利用者様も困ってることがないかっていうのを聞いてお互いの橋渡しをしてあげています。
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半年経過した後は、就業センターさんがメインになってサポート活動してくれるような仕組みになっています。
利用者様もなんですけど企業様の努力というか受け入れ体制っていうのもすごくありがたいですね。
障がいを抱えている方を受け入れてくれる企業様も増えています
企業様も、障がいを抱えている方の雇用率を上げなくてはいけないというのがあるので、雇用したいという企業様は増えていますね。
就労支援事業所に入られてから就職することで、就職後も障がいを抱えている方と企業様の間にこういった見守っている人がいるという感じが強みになってるようです。自分を見守ってくれている人がいるというのが、利用者様にとってはとても心強いようで、それがグッドライフのような就労支援事業を利用された方の強みになっているような感じはしますね。
就職された利用者様で困った時に電話してくる方がいたりするんですが、その場合も、乗り越えるようなサポートをしています。
例えば「その就職先にこういう風に相談してみようか」と話して、障がいを抱えている方が就職先と話しやすい環境を作る、といった感じですね。
そのようにして、徐々にグッドライフから離れていくようにサポートしています。
みんなに最後送り出す時に「つらくなったらいつでも遊びに来てもいいし、そこに就職したからって絶対ってわけじゃないから、もしも辛くなったらいつでも帰ってきていいんだからね」っと言って送り出しているんですけど、帰ってこないですね。笑
今まで就職できた方で辞めるという方は本当におらず、9割の方は続いています。
就職者の方は直接のサポートはなくなっていくんですが、年に一度グッドライフで開催している遠足やバーベキューの時に声を掛けて参加してもらっています。
遠足などは、「遠足に年一回行くんだ」ということで、就職した先でいただいた自分のお給料からきちんと貯めて、手土産まで持って参加されるんですよ。みなさん、人情味があるというか、基本的には人が優しい方たちなんです。
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遠足の際は、昔の仲間と会ってリフレッシュするっていう感じのようです。
帰る場所があるというのは、「いつでも帰れるんだ」と思うようで、逆に頑張れるようです。そうですよね、私たちも、帰れる場所があると思ったら、もうひと頑張りしようと思いますね。
今でもね電話来たりする方はあります。支援員さんたちとの絆っていうか信頼関係というのはとてもすごいなと思いますね。
「おはよう」という一言も言えなかった方がこの春から就職します
通い始めた当初は、ほんとに全然話せなかったのが、毎日先生たちに挨拶されるようになり、徐々に心を開いてくれ「おはよう」と言えるようになり、今ではたくさんお話ししてくれるようになりました。
4年間通っていただき、就職の面接に行ったのですが、その際に、「自分はいっぺんにたくさんのことを言われると分からないので、ゆっくりひとつづつ言ってもらえればできます」と自分で伝えられたというのがものすごい成長を感じられてとても嬉しかったです。
<後編に続く>
<株式会社グッドライフ>
障がい者支援事業所 株式会社グッドライフ
(中央)常務 髙根由紀子さん
(左) グッドライフ香取みはる園管理者兼サービス管理責任者 立原ゆかりさん
(右) グッドライフ香取みはる園 就労支援員 熱田一美さん