船橋市のタカスポで「アンプティサッカー」、体験会と交流会に行ってきた。
高瀬下水処理場(通称=タカスポ、船橋市高瀬町56-1)で6月11日、切断障がい者らが主体でプレーする「アンプティサッカー」の交流会が開催され、関東圏中心に各所から5チーム約30人の選手が有志で参加した。
同会を主催したのは、日本アンプティサッカー協会。翌週から始まるリーグ戦に向け、ウォーミングアップを兼ねた選手間の顔合わせ、体験会の実施による競技の認知向上と幅広い層への普及を目的に年2回開催されているものだという。
「アンプティサッカー」とは、切断障がいや欠損障がいや機能不全を伴う障がい者が行うサッカーで従来の障がい者スポーツのような専門器具が必要ない。
歩行補助具「クラッチ」を使うだけで参加できることから、「もっとも気軽に始められる障がい者スポーツ」として近年注目を集めているという。
下肢切断者がフィールドプレイヤーを担当し、「クラッチ」を活用し片足でボールを扱う。ゴールキーパーは、上肢切断者が担当し片腕のみでプレーする7人制のスポーツ。
オフサイドがないなど細かい部分がサッカーとは異なる。2010年に協会が設立され、本格的に選手の育成や企業との連携などが進められてきたという。登録選手は国内約100人、今年は2年に一回のワールドカップ開催年だという。
この日の交流試合は、11時半キックオフ。30分のゲームを3本実施。客席には、家族や支援者のほかに一般客も訪れ、試合を楽しんだ。試合後14時から17時まで体験会を実施。近隣でサッカーチームに所属する子ども達20人ほどが参加した。
「片足がない方がするサッカーなのでもっとスローペースなのかと思っていたら、スピーディーでかなり激しい接触プレイもあって驚かされました。何より、『クラッチ』を使ったアクロバティックなボレーシュートやオーバーヘッドに近いシュートなど、手に汗握る迫力でした」と、交流試合の観戦者の男性。
元日本代表選手の根本さんと古城さん
この日交流試合でプレーした初代日本代表に選出された根本大吾選手(48)は、「パラ競技(パラリンピックの採択競技)ではないのでまだまだ知らない方も多い競技です。障がい者も健常者も気兼ねなく一緒にプレーできるコミュニティを作りたいと考え、小学校での体験会や講演活動などに積極的に参加させて頂き、普及に力を入れています」と話す。
根本さんは18才で事故にあい、左足を切断。競技は10年ほど前から始めた。ちょうど、協会発足のタイミングでもあり、初代日本代表メンバーとして海外派遣も経験してきた同競技の草分け的な存在。
アンプティサッカーは、比較的道具が安価で手に入る事、他の競技との親和性の高さなどから車椅子バスケットボール、パラサーフィン、陸上などのパラ選手も活躍しているという。実際、この日のメンバーには、陸上で2000年にシドニーパラリンピックに出場8位入賞を果たした古城暁博さん(37)も選手として出場していた。
様々なパラ競技との連携、健常者と障がい者が一緒になって汗を流せる特性から「健常者が障がい者に合わせていけば競技場もトイレも問題ない。障がい者用トイレは健常者も使える、特別なのではなく、知らないだけ。普通に一緒にいるという環境が必要だと思う」と、千葉県内唯一のアンプティサッカーチーム「BUMBLEBEE(バンブルビー)」を経営する柏原さんは思いを語る。
「今後、船橋市や千葉県などにも呼びかけ少年カテゴリーや成人カテゴリー、シニアなどの各分野と連携してアンプティサッカーを活用し、幅広い年齢、障がいや健常者などの枠を超えた相互理解とスポーツ普及に力を入れていきたい」とも。
この日、交流試合の後に行われた体験会では、ACミランサッカークラブの子ども達がアンプティサッカーを体験。クラッチを使ってのドリブルやパス、シュートなどを体験し、簡単なゲームを行うなどしてアンプティサッカーを通じて障がいを持つ人たちとの交流を楽しんだ。
同クラブは、「バンブルビー」と同じ経営母体のサッカーチームとして活動している。「世界中でもACミランのフランチャイズクラブで障がい者チームを持っているところは初めてなのでは?」と柏原さん。「障がい者も健常者もなく、みんなが同じようにグラウンドで汗を流し、スポーツを楽しめたら良いと思う。障がいが普通の生活の中にある環境にしていきたい」とも。