松が丘で家主と長年住み続けてきた家のお別れ会「棟下式」を開催、空き家削減にも一役か
8/26(金)松が丘で家主と長年住み続けてきた家のお別れ会「棟下式」を開催
空き家削減への一役も期待
松が丘の閑静な住宅街の一角で昨年空き家になった自宅を売却・解体するにあたって家主と家のお別れ会「棟下式(むねおろしき)」が行われ、この街に40年以上住み続けてきた石川さん親子が自宅との最後の時間を過ごした。
同事業は、不動産大手POLUSグループが「家を建てるときには棟上式がある。壊すときにお別れする式があっても良いのではないか」と提唱。2017年、同社が携わった元企業研修施設だった建物の再開発プロジェクトをきっかけに誕生したという。人の思い出や愛着が詰まっている建物とその建物を長く利用してきた人たちが建物と過ごした時間に思いを馳せ、感謝と別れを告げ、次に引き継ぐきっかけとして提供している。
これまでに、一般戸建て住宅22棟、ビルなどの大規模施設5棟、歴史的建造物5棟などの事例があり、近年には都内で廃校となった学校でも同様の「棟下式」を実施し、学校の利用者や近隣住民らが駆け付け思い出を振り返り、別れを惜しんだという。同式では、神主が祈祷を捧げる「神事」や建物と持ち主や利用者らが思い出を語る「思い出の昇華」をセットで提供する。
同グループとの取引関係がない場合にも25万円程度の予算で同様の式を行える。POLUSグループで建物の売却をする場合はPOLUSグループが式の費用を持つため無料。
今回、40年以上住んできた自宅との別れを惜しみ「棟下式」を実施した石川さん親子は、「子どもの成長とともに過ごしてきた大切な家。主人が大切にしてきた庭木。反抗期に怒ったり、胸が締め付けられるような大変なことがあった時には子ども達のことを抱きしめてきた。思い返すのは日常生活の事ばかり、この家での家族の時間を振り返る機会を頂いて感謝しています」と、昨年夫を亡くし家の売却を決めたという石川良子さん。
「これまでにも解体の時に涙を流して悲しんでいる家主さんの姿を何度も見てきた。新築を建てるばかりではなく、思い出を振り返る時間があっても良いのでは…と、思っていたところに、POLUSさんにこの事業の話を聞き、お客様に紹介してみました」と、船橋駅北口で不動産事業を営んでいる住建(本町6-6-3)の多田眞康社長。
また同事業は、POLUSグループ社内でも社員のモチベーションアップに貢献している側面もあるという。同社で用地仕入れを担当しているスタッフは「家主さんとこういう時間を過ごす機会は少ない。手放す方の気持ちを知り土地を大切に次の方に活用していただけるよう気を引き締めるとともに、自社内のことながら良い事をしているんだなと実感しました」と感想を話す。
同社広報によると、「『相続したばかりなのに売ってお金に変えるなんて近所の目も気になる』『売却するのにどのくらいのお金と手間がかかるのか分からない』『複数で相続した住宅なので売却するきっかけがない』などの理由で多くの空き家がそのままになっています。家族が集まった際に思い出を振り返るとともに、売却する事で有効に活用できる人に引き継ぐというきっかけになっている部分もあります」と、空き家売却に向かうきっかけの一つとして行政とのタイアップも模索しているという。
今回の石川邸は266平方メートルの敷地。今後2棟の住宅として新築分譲される予定だという。