文庫版「20歳のソウル」装画担当は船橋出身イラストレーターの石居麻耶さん、携わった経緯と作品にかけた思い
9/7(水)文庫版「20歳のソウル」装画担当は船橋出身イラストレーターの石居麻耶さん
携わった経緯と作品にかけた思い
今年春から夏にかけ全国上映され話題となった映画「20歳のソウル」、この原作となった文庫本の装画を担当したのが船橋市出身のクリエイター・石居麻耶さんだということが関係者の話からわかった。
石居さんは1978年生まれ、小栗原小学校、葛飾中学校を卒業。現在も船橋市内に在住。大学は東京藝術大学美術学部デザイン学科に進学、同大学院描画造形研究室を修了。個展やグループ展等の展覧会、ホームページ、ブログで発表した作品をきっかけに、本の装画、週刊誌、文芸誌、新聞連載のイラスト等で業界に名前が知れ渡り現在の活躍に至っている。
「20歳のソウル」の仕事依頼が来た時、自分の住む町で親しみのある「市船」の話とあって、「いつも以上に思い入れを持って取り組めそう」と二つ返事で引き受けた。いつものように作品を読んで作画に臨もうとページをめくったが、大義くんの物語に自身の経験がシンクロし他人事とは思えなかったという。
2019年に「下垂体性成長ホルモン分泌亢進症」という難病で脳腫瘍の摘出手術を済ませたばかりだった石居さん。「大義くんの年齢で自分の身に降りかかったとして、同じように強く生きられるだろうか」と、感じるものがあった。
大学受験直前にそれまでの受験生活を支えてくれていた恩師が急逝。それ以来「生」や「死」、「何のために作品を描くのか」など心のどこかにもやもやとしたものを抱えて生きてきたと振り返る。
「20歳のソウル」で大義くんの生き方にふれ、「目に見えるものの価値やお金だけではなく、生きてきた軌跡や作品にこそ『残るもの』があるのだと勇気づけられました」と石居さん。「これまで、どこか負の要素で描いていた部分があった…『死』について前向きにとらえる事が出来るようになりました。一日一日を大切に生きようと考えられるようになったのです」とも。
また、それまでの仕事では、実写に近い手描きの風景を描くことが多かったが、「20歳のソウル」で人物をメインに描いたことで自分の新たな表現の幅にも気が付いた。さらに、手描きの比率が高いこれまでの仕事とは異なり、パソコン処理での処理を多用した手法にチャレンジする転機にもなったという。
「市船野球部」の甲子園出場以降、書店店頭には「祝市立船橋、甲子園出場決定」帯を付け、神尾楓珠さんの写真をあしらった文庫本が流通している。石居さんの手掛けたイラストの装画は初期に流通した文庫本のもので現在新品で手に入れる事は難しくなっている。
しかし近々、石居さんのイラストを出力し額装したものを船橋市に寄贈する予定だという。石居さんの作品は、船橋市を通じて市立船橋高校に掲示される予定だという。
石居さんの個展は、9月6日~10月8日まで大阪のサクラアートミュージアムでクレパス画を展示。10月29日~11月12日には、GallerySuchi(ギャラリー須知/中央区日本橋茅場町2-17-13第二井上ビル2階)でも個展を開催。開館時間は12時~18時、日・月・祝休館。