船橋の漁業事業者「海光物産」が県内初の水産業のエコ認証「MEL」取得、次世代以降も持続可能な漁業の為に
9/17(土)船橋の漁業事業者「海光物産」が県内初の水産業のエコ認証「MEL」取得
次世代以降も持続可能な漁業の為に
船橋市内に本社を構える水産会社「海光物産」(船橋市湊町3-20-7、TEL047-435-2050)が昨年6月18日、海のエコ認証と呼ばれる「MEL(marine eco label)」取得に成功していたが、今年8月に認証機関「マリン・エコラベル・ジャパン協議会」主催の認証授賞式に参加した事でその詳細が明らかになった。
千葉県内で初となる同認証の取得で、東京湾の持続可能な環境維持と次世代への漁業継承に向けて大きな一歩を踏み出したと水産庁や漁業関係者から高い評価を受けているという。
海光物産は、船橋漁港で巻き網漁を行ってる大傳丸と中仙丸の魚を販売、流通ルートに乗せる事業を生業とする水産会社で二社の共同出資で開設された。
今回取得に成功したMELとは、主に漁業事業者などや加工・流通業者を対象にした認証制度で、認証を受けた事業者はMELマークを付けた商品を売り場に出すことができるようになる。消費者がエコラベルについて学ぶことでMELマーク商品を優先的に購入していけば海や漁業事業者らの環境を守っていけるという仕組みだ。
認証にあたっては、飢餓・食料不安の撲滅、貧困の削減、天然資源の持続的管理という3つの目標を掲げているFAO(国連食糧農業機関)のガイドラインに則したGSSI(GLOBAL SUSTAINABLE SEAFOOD INITATITVE)を基準にしている。国(水産庁)主導で定めたこの認証制度は2019年に世界で9番目にGSSIに承認されたことで国際的な認証制度として認められ今後の発展が期待されているという。
MEL認証では、漁業者だけでなく、加工業者、流通に携わる市場から消費者に販売する小売店まで全てが認証基準を満たしていることが求められる。一般に漁業関連のエコラベル取得は、周辺事業者との連携が必要になる為に他の業界で取得できるエコラベル認証と比較しても難易度が高いという。
今回、海光物産は千葉県内では初のMEL認証となるが、全国では18番目となる認証。同社代表の大野和彦さんは「オリンピックに江戸前の魚を」とテーマを掲げてオリンピック協会認証基準を満たすために持続可能な漁業を模索してきた。
「オリンピックで提供できるレベルの基準を満たせる漁業となると他の認証基準にも十分適うものではないか」と考え、今回のMEL取得に向けて数年前から舵取りを行ってきた。自社だけでなく、加工先、販売先などの協力を経ての認証取得。「まだまだ、マリンエコラベルという制度を知らない消費者も多い。今後は普及活動も合わせて行っていけたら」と大野さん。
日本一の漁獲量は誇りではなく海を守る義務と捉える
スズキの漁獲量日本一を記録する船橋漁港。大野さんによると「誇りではなく、次世代に向けて海の環境を改善していく義務と捉えています。スズキの漁獲量は年々減っている。ほかに獲るものがないからスズキを獲ってその場を凌ぐ。図らずも日本一の漁獲量というの考え方もできる。このまま無計画に乱獲すればスズキもいなくなってしまう日はそう遠くない」と警笛を鳴らす。
大野さんの経営する大傳丸、盟友の中村さんが経営する中仙丸ではコロナ禍に「間引き操業」を実施した。飲食店でのニーズが少ないため漁価が上がらない時期はあえて従業員に休養を取らせ、無理に出漁する必要はないという考えからだ。
「かつては早い者勝ち。たくさん獲ったものが勝者。という考え方がスタンダードだったこともある。許可外の場所で漁をする船も多かった」と数十年前を振り返る。「1984年に漁獲量がピークでそれ以降は減少し続けている。安心・安全な国産魚がスーパーや鮮魚店の店頭に割安で並ぶという『当たり前』の崩壊が迫っています」とも。
円安の進む昨今、経済成長著しいアジアを中心に魚食文化が広がりをみせ、徐々に日本市場は買い負けを起こしつつある。海光物産では、MEL認証を機に、納品用の通い箱を独自開発し洗って再利用するものに変えた。使い捨てと比較して単価は倍になるが繰り返し利用することで資源の無駄を省けるからだ。
また、有識者とともに東京湾のデータをとり入れ「資源管理計画」を千葉県に提出。自主的に休漁日を設け「早い者勝ち、多くとったもの勝ち」という旧来からの漁師の常識に疑問符を投げかける。当然、漁獲量が減ればその分収入も減ってしまう。江戸前スズキを鮮度の高い状態で食卓に届け安心して食べてもらう為に独自の血抜き「瞬〆」も開発。単価の向上に向けて細かい努力を積み上げていく。
江戸前スズキに関する正しい知識を普及させるため小・中学校中心に出張授業なども行い、その日の給食にスズキを提供する食育活動にもチ積極的に参加する。また、Instagramなどを通じて若い層への普及を目指すなど大野さんの持続可能な漁業へのチャレンジは無限の広がりをみせている。