愛知県豊橋市・田原市でSDGsなスーパーマーケット経営をする「渥美フーズ」を訪ねてきた。

  2022/9/25
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こんにちは。船橋市場内で市場カフェを経営しつつその2階でタウン誌の編集部を運営するやまさきです。今回は、市場の今後に関する情報収集と経営者仲間の勉強会ネタ仕入れを兼ねて愛知県豊橋市のスーパーマーケット「ビオ・あつみエピスリー豊橋」を経営する「渥美フーズ」を訪問してきました。

渥美フーズは、地方のスーパーの中でも何かと注目を集める先進的な会社。新しい取組みをどんどん社内に採り入れて改革を実践。いち早く既存の「安売り路線」から厳選した商品の魅力で勝負するスーパーの形に変革していった渡会社長が舵取りする会社。

スーパーの概念を変える「ビオ・あつみエピスリー豊橋」

ビオ・あつみエピスリーは、必要なものを必要な量で購入できるスーパー。大豆や珈琲豆などの豆類はもちろん、ドライフルーツや小麦粉や砂糖、黒糖などの各種粉類も量り売り可能。もちろん通常のパッケージに入った商品も売っています。

一人暮らしだったり、たまにしか使わないものをパッケージにしてある程度まとまった価格にするのは「売り手側」の理屈。消費者は自分の欲しい分を欲しいタイミングで購入できればよく、常時使う砂糖や塩などの調味料でもなければ自宅に貯蔵しておく必要はないですよね。

なので、ビオ・あつみエピスリーを利用する買い物客は、常に新鮮できちんと保管・管理された粉や調味料を購入する事ができるのです。

量り売りが基本のビオ・あつみエピスリー
船橋珈琲タウン化計画をけん引するフィロコフィア商品も

ビオ・あつみエピスリーの棚に陳列されている商品は、基本的に身体を気遣う人たちにうれしいオーガニックや有機栽培、フェアトレードなどの高価格帯のハイブランド。もちろん、コーヒータウン船橋市を代表する「フィロコフィア」の商品も並びます。

揚げ物も注文をもらってから揚げる

ビオ・あつみエピスリーが持るもう一つ特徴が弁当や総菜のコーナー。惣菜は、注文を受けてから揚げるスタイル。弁当も総菜も購入したら店舗の中2階にあるテラスのイートインスペースで食べることができる。

「毎日の買い物が必要なものを補充する『作業』ではなく、スーパーに行くことが楽しくなるような店」を目指して始めたというこの業態。たしかにスーパーマーケットならどんな商品も幅広く揃っているので中途半端な飲食店にいくよりも楽しく食事ができそうだ。※ここでは書ききれないので詳細は公式HPを参照ください。

https://toyohashi.bioatsumi.com/

この店舗だけでも全国からスーパーマーケットの経営者や担当者が年中視察にやってくるという。

しかし、今回僕たちが視察にやってきたのは、この先端的な取組みをしているスーパーの裏側。ひそかに水面下で進行している新しい取り組みがターゲット。

皆さん、「グリストラップ」ってご存知ですか?

油ものなどをそのまま排水に流してしまうと水質汚染の原因になってしまうので排水に流れないようにためておく設備で、飲食店やコンビニ経営者など「飲食に関わる人々」から最も恐れられている仕事の一つと言っても過言ではない恐怖のワードいわゆる「グリスト」です。

ビオ・あつみエピスリーの「グリスト」はかなりきれい

「グリスト掃除しておいて~」と言われるのが嫌で飲食店をやめる人がいるほど嫌われる原因は、強烈な悪臭とヌルヌルした油汚れ…

「僕もこの仕事がずっと嫌で嫌で仕方がなかったんです。でも、最近は沈没船から宝をすくい上げているような喜びを感じます」と渡会社長。今回視察の大きな目的は一般的に産業廃棄物と言われる「ゴミ」が畑の肥料として有効に使える可能性があると聞いたから。

グリストラップ掃除におがくずを活用

グリストラップの底に排水口があるという特性を活かし、レンコンなどの納品で「どこのスーパーにもある」という「おがくず」を使って掃除。

おがくずは水に浮く性質を利用し「グリストラップ」でとり切れず浮いている油をおがくずに吸い込ませます。これで油はほぼきれいに回収。おがくずに吸収させた油はコンテナに収納し、野菜くずと一緒にある場所に持っていきます。

惣菜や弁当の調理から出る野菜くず

弁当や総菜から生じる野菜くずだけでなく、スイーツ作りで生じる卵も合わせて毎日の生ごみは大変な量になります。同社ではまず3店舗分の生ごみを回収し、自社で運営する畑の堆肥に変えていく取組を行っています。

含有水分の多い野菜類は畑で乾燥させ練り込む

当初、野菜くずも一緒に堆肥にしてしまおうと考えていたそうですが、水分が多すぎると「腐敗する」原因になることから最近は畑で天日に当てて乾かし適度な乾燥状態になったら畑に練り込むそうです。

生ごみをたい肥にするには、「発酵」を用います。発酵には「嫌気性発酵」と「好気性発酵」があり、嫌気性発酵では発酵が進むと「メタンガス」と「消化液」に変わっていきます。空気に触れると死んでしまう微生物を活用するので空気に触れないように密閉して発酵を進ませます。

一方の「好気性発酵」は、空気が好きな微生物を活用して発酵を促進させる方法。「好気性発酵」の場合、発酵が進むにしたがって60度近くの高熱が出ます。この熱で微生物も死滅するため嫌気性発酵よりも栄養価は少なくなるそうです。また、空気に触れる方が発酵が多く進むので、発酵が進むにしたがってかくはんして土と混ぜる事が必要になります。

店舗から運んできたゴミを乾燥させます
感想したものを堆肥と混ぜ発酵を促進させる
週に1~2回程度土をかくはんして発酵を促進させる
生ごみ状態ではハエやその幼虫「ウジ」がわく、発酵が進むにつれてハエの発生もなくなる

堆肥作りやゴミの処理・運搬を生業として行う場合は、行政の「許可」がいる。俗にいう「一般廃棄物」や「産業廃棄物」という類いのものだ。

今回、同社で行っている生ごみの処理及び堆肥作りはすべて自社内で行っている事なのでそうした許可は必要ないそうだが、今後他社のごみを集めたり、堆肥の販売を始めるようになると別途事業としての許可が必要になるようだ。

同社では、現在研究してる生ゴミを堆肥に変えていく一連の流れを事業化する際に新規事業部として走らせ、別会社化していくことも視野に入れているという。

堆肥は自社で運営する畑にまき生育状況をチェック
自社で製造した堆肥をまくことで「明らかに育ちが変わる」と実感している渡会社長
オリーブや柑橘系の作物を育てている自社農園

農作物は、オリーブやミカンやレモンなどの柑橘系、いちじくなど多岐にわたる。なるべく他の農家が生産していないもの、国産のものを購入すると高価なものなどを中心に堆肥や畑、気候との相性を比較検討しデータを蓄積している。

自社で製造する農産物は当然、自然農に近い有機栽培の形を採りトレーサビリティも完全に追えるものになる。生産からすべて自社管理になるので消費者も安心だ。さらに、自社から排出される生ごみを堆肥にしたうえで再利用しているので環境負荷も少なく消費者受けもよい。SDGsのサイクルにも適っているオリジナル商品となる。

安心安全な食を提供する「あつみ食堂」

同社が注目されるのは、スーパーマーケット業態の先駆け「ビオ・あつみエピスリー」や「生ごみからの堆肥作り」だけではない。自社で手掛ける豊橋市内に開店した「あつみ食堂」も面白い取り組みだ。

天井が高く柱の少ないフロア、広々とした空間を贅沢に活用しつつ木のぬくもりを感じさせる内装でゆったりと寛げる贅沢なファミリーレストランといった趣をもつのが「あつみ食堂」だ。

基本のセットを注文すると約20種類の惣菜ビュッフェを自由に食べられるようになる。それらの全てがどこか懐かしい感じの家庭の味で「お母さんが子ども達や家族の健康を考えて丁寧に作っている料理」という味付け。しっかり出汁をひいているので余計な調味料を使っていないのであろうことは一口食べでわかる。

家庭ではなかなか面倒くさくて作らないような凝ったものから簡単だけど何種類か食卓に並ぶと嬉しいものまで幅広く用意されている。ビュッフェからとりわけてくるだけで楽しくなり、目移りするので総菜メニュー全てを少しずつ食べたくなってしまいついとりすぎてしまう。

何種類も欲張ってしまう
ランチで1200円~2000円の価格帯のセット

無人の産直所「みんなの産直マルシェYotteco」

そして更に見どころが続く。同社で始めた無人直売所がまた面白い。コンビニの空き店舗を活用して完全無人の直売所を開設。地域内で菓子作りや手芸などをしているママ作家さん…もちろん農家も含めて様々な人が自己表現の場として活用しているみんなの産直マルシェ「Yotteco(よってこ)」。

店内および駐車場は防犯カメラで24時間スマホから映像を確認可能。店内は、空調はもちろんWi-Fiも充電可能なコンセントも完備。高校生の時に学校や家の近くにこんな場所があったら快適だっただろうなと感じる。

現在の出店者は、たしか40件くらいだったはず…(訪問してから記事書くまでに大分日が経ってしまったので忘れてしまった…)。いずれも、90センチ幅のスペースに対して5000円/月を支払っているそうだ。売上の10%を管理費として納めるだけで店を持つことができる。冷凍や冷蔵のショーケースは別途オプション料金がかかるという。

レジは完全無人レジ。QRコード決済やカード決済は行っていない。

「カードやQRコード決済があると便利だけど、その分手数料を持っていかれてしまう。出店者の人たちの利益を確保するために、まずは現金決済のみで始めている」とのこと。

この形であれば、内装費を抑えて居抜きで出店できるし、出店料で家賃と水光熱費やリース料などを収支トントンまで持っていく事が出来たら同じような形での複数出店も可能になるだろう。船橋でもコンビニ跡地の活用策として非常に有効な手段だと感じた。

おまけ

実は僕は中学生の頃2年間、愛知県の豊橋市に住んでいた経験があるんです。
なので今回の豊橋訪問に際して前泊して同級生のお店に顔出してから視察に入ったのです。以下のInstagramリンクはその同級生のお店。

ワインと肉料理がおいしいお店で同級生の店ながら「近くにこんな店があったら重宝するのになぁ」と感じました。また、豊橋に来た時には絶対に立ち寄ろう」と心に誓います。

今回訪問したお店

店名:ビオ・あつみエピスリー
住所:愛知県豊橋市三ノ輪町本興寺2-12
TEL:0532-69-5544
営業時間:10時~20時
定休日:年中無休
駐車場:多数あり
公式HP: https://toyohashi.bioatsumi.com/

店名:あつみ食堂
住所:愛知県豊橋市山田三番町66
TEL:0532-37-1177
営業時間:11:00〜21:00(LO20:30)
定休日:
駐車場:多数あり
公式HP: https://www.foodoasis.jp/shoplist

店名:みんなの産直マルシェYotteco
住所:愛知県田原市福江町中羽根105-1
TEL:0531-33-0380(渥美フーズ本社)
営業時間:24時間営業(無人営業)
定休日:年中無休
駐車場:多数あり
公式HP: https://yotteco.com/

店名:WINE Dining Mu(ミュー)
住所:愛知県豊橋市松葉町1-25
TEL:0532-56-5660
営業時間:月・水~金・祝日17時~24時(L.O.23時)、土・日15時~24時(L.O.23時)
定休日:火曜日
公式HP: https://www.facebook.com/Cafe.de.Mu.2014

主婦と高齢者で千葉を編集する
主婦と高齢者で千葉を編集する
2009年、千葉県船橋市でタウン誌「ふなばし再発見!!マガジンMyFuna」創刊、同時にローカルニュース「MyFunaねっと」配信開始。その後、2011年にみ...
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