千葉市花見川区で空き家事業をスタートさせた建築士の佐藤さんを訪問してみた。
建築家の佐藤紘孝さんが町づくりの仲間と仕掛けている「軒先珈琲」。このプロジェクトが空き家の利活用と掛け合わせ、地域に新しい価値を生み出している。
軒先珈琲とは、「いつかカフェをひらきたい」とか「コーヒーの焙煎をするのが夢だった」という人たちが集い、将来の夢を語り合い、コミュニティを形成する。
行政の企画するイベントや実証実験などに出店する事で実際にお客さんに珈琲も提供する。リアルな体験を通じ「3Biz(サンビズ=月3万円稼げるスモールビジネス)」を可能にしようとする会員制度だ。(ちなみに、船橋市場の中にある市場カフェでも「おじさん珈琲」という名前で同じようにキッチンカーや屋台を使った出店体験モデルを展開している)
軒先珈琲では、家や店舗の軒先を使ってコーヒーを提供する。狭小スペースで調理できることから空間運営などでも利用可能、軒先で淹れたコーヒーを室内でゆっくりと飲むなどすることができるため、空き家の利活用事業と相性が良い。
今回、佐藤さんが取得した空き家は、鷹の台カントリークラブ横の住宅街にある庭付きの中古戸建。敷地内にもともと作業小屋みたいなものが建っていたようでその地下はガレージになっている。周辺には有料駐車場も多数あり徒歩5分程度の場所にはコンビニもある。
おそらく、開発から30~40年程たっている住宅街。庭付き一戸建てが立ち並ぶ閑静な一角にあり周辺相場では1200万円程度だという物件を相場より大幅にプライスダウンして購入できたという。
最寄り駅「京成大和田駅」からは徒歩8分。建築士の目で診断し、どの部分に補修が必要なのか診断した上で指値を入れて購入したという。
空き家は、まだ全てのリノベを完了しておらず、今回のお披露目会は実施。梁は見えているし、壁や天井の断熱材などもむき出しのまま。この状態から「この状態でも活用可能ということを示す」「空き家を直していく過程を体験プログラムにする」などの様々な意図があるそうだ。
1階部分、床だけ無垢の木材を使ってリノベ―ション済み。壁はポリカボードで目隠し程度に覆っているだけという簡素な壁のあしらい。
商品棚を設置して、リヤカーゴ(尾道市のマルシェで活躍している街づくり屋台)を配置するだけでこの空間がなんとなくオシャレそうに見えて、コーヒーがある事で人が集う場になるのが不思議だ。
リヤカーゴの設計図やロゴ、利用例に関してはリヤカーゴの権利者が公式Facebookページに無料公開している。
リヤカーゴ – おしゃれな屋台リヤカーゴで素敵なお店を始めませんか (reacargo.com)
全てのコンテンツを自分で一から創り上げていくのではなく、既に誰かが手掛けている良いものがあればそれを活用したり、一緒に組んだりしながら最適なものを最速で作っていくというのが佐藤さんのスタイル。空き家利活用事業に関しては、「建築士」×「軒先珈琲」×「リヤカーゴ」というコンテンツコラボが良いバランスで形になっている。
さらに、船橋市に本拠地を置く「民間図書館」の書棚も設置されている。民間図書館は、読み終えた本を市民から集め、データベース化。これらを無料で貸出し、繰り返し借りて、返しに来ることで貸し手のボランティアと借り手の間で本を通じたコミュニケーションを実現するという事業。
月額3000円程度の会費で本は(おそらく)毎月入れ替わり、本の入れ替えなどは本部で行い、スタッフが入れ替えにやってきたり、郵送で届けられるという(昔聞いたけど、詳しい話忘れました)。
リノベーションしているのは1階のみで、2階はそのまま前の住民が使っていた当時の状態だという。屋根裏も収納として活用していたようで、はしごを使って覗く事が出来たので写真を撮っておきました。
屋根裏には特に断熱など敷かれておらず、物件全体もはいた息が白くなるほど寒かったです(訪問したのは、22年2月20日)。それでも、友人と2時間程度コーヒーを飲みながら会話が弾んだので「暖房が無くても何とかなるものなのだな」と感じたのも新しい発見だった。
結局、そこそこの時間をこの空き家で過ごし新たな出会いもあってなかなか充実した時間を過ごせたのですが、空き家の補修を完璧に仕上げているかどうかよりも、むしろ集まってくる人がどんな人なのかとか人を呼び寄せるコンセプトの立て方が重要だなと感じた次第です。