船橋の老舗海苔店「船福」が2023年2月末で閉店へ、海苔の製造・販売業から無期限休業

  2022/12/13
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12/12(月)船橋の老舗海苔店「船福」が2023年2月末で閉店へ

海苔の製造・販売業から無期限休業

 船橋駅北側に本社を構える老舗海苔店「船福」(船橋市本町6-21-1、TEL047-423-2729)が2023年2月末をもって、海苔の製造、卸販売、小売業から無期限で休業する。

 同社の創業は1921(大正10)年。現在の浜町あたりでアサリなどを採る漁師をしていた篠田弥助さんの息子・福松さんが、船橋の「船」と福松の「福」を併せ、「船福」という屋号で、海老川沿い(現在の本町3丁目)で漁師を始めた。その後、福松さんの息子・五郎さんが漁師「船福」を継承すると、当時、三番瀬に広まってきた海苔の養殖に着目。1952(昭和27)年に乾海苔問屋、株式会社船福が誕生した。

 「私たちは味の良い三番瀬と千葉県の海苔だけを扱うことにこだわってきた」と話すのは会長・篠田好造さん。「当時は『船橋の海苔?』と聞かれるほど、船橋で海苔が穫れることも知らない人が多かった。『船橋の海苔』をブランドとして打ち出し、徐々に都内の百貨店などでも扱っていただけるようになっていきました」と振り返る。

 2012(平成24)年には「ふなばし産品ブランド」に「船福極上船橋三番瀬焼海苔5枚入」が選ばれ、2019(令和元)年には「三番瀬産青混ぜ焼海苔5枚入り」が選ばれた。

 「私たちは海苔を販売する者として、海苔を扱う業界でのルールを守りながら、海苔の品質を一年通して保てるよう、さまざまな工夫をしてきた」と好造さん。「しかし、海苔にまつわるさまざまな変化から、現状では私たちが三番瀬産や千葉県産にこだわって、今の品質を保って商品を提供し続けていくことは難しいと判断した」と副社長・篠田貢一さんは話す。

 変化のうち、一番大きく影響したのは千葉県全体の海苔の生産量の減少だという。千葉県産の養殖量は、昭和62年と比べ、3分の1以下の量となっている。篠田さんは「近年は昭和53年の最盛期と比べたら8分の1以下になった年もあるんです。その中で1年を通してクオリティを保っていくことは非常に難しい」とも。

 「あとは加工場の老朽化もあって。もう50年以上も経つので建て替えをするかどうかも考えましたが、いろいろと検討した結果、時代の変化に合わせて我々も変わっていくべきだという結論に達しました」と好造さん。

 今年6月、顧客に向けて閉店のお知らせを報じると、多くの人からメッセージが寄せられたという。「親子3世代で利用させていただきました。ありがとうございました」「船福さんの海苔を差し上げた方には、たいへん喜んでいただいていた。とても残念です」といった声が多く寄せられているという。

 社長・篠田好司さんは「今後も『江戸前海苔』の生産状況などを注視しつつ、何年後、何十年後になるかはわかりませんが、昔ながらの上質な『船福の江戸前海苔』を再びお客様に提供できる日を、大きな夢のひとつとして希望を頂きながら、無期限での休業とさせていただきます」とコメントした。

 「これまで、私たちの海苔を買ってくださった方への感謝を伝えたい。残りわずかな期間ではありますが、恩返しができれば。海苔業界については、生産者、問屋、組合がそれぞれいいバランス、関係性を保って、今後も続いていってもらいたい」と好造さんは目を細める。

 好司さんは「いつの日か、店先にタヌキの置物と『船福本店』ののれんがあがっているのを見かけた際には、お気軽にのれんをくぐっていただけたら幸いです。これまで長い間、当店を支えてくださったお客様、ならびに海苔漁師の方々、本当にありがとうございました」と頭を下げた。

  • 海苔問屋を始めたころの店舗

  • 工場内の様子。最終チェックは手作業で行われる

  • 包装も自社で行う

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