習志野市・谷津商店会でクラフトビールをつくる今井貴大さんに話を聞いた。

  2021/5/16
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以下は 3 年前に書かれた内容です

こんにちは。
船橋市でタウン誌やローカルニュース編集を仕事としてきたやまけんです。数年前から市場の中で「市場カフェ」という人の交流するスペースを運営してきた経験から「地方って人が魅力なのでは??」と房総半島を中心に地方を回って人の魅力を取材しています。

むぎのいえ、ここを歩くとワクワクします

今回訪問したのは、習志野市の谷津商店会にあるクラフトビールのブリュワリー「むぎのいえ」さんです。こちらの店主今井貴大さんに話を伺ってきました。

都内で修業してクラフトビールのブリュワリーを4年前に習志野市谷津に開設した今井さん

「むぎのいえ」開設は、2017年6月7日。今井さんは、兵庫県神戸市の出身。幼稚園の時に千葉県に越してきて高校卒業までずっと千葉県在住。高校卒業後は、照明の専門学校に進学しつつ照明アシスタントとしてインターンをしつつキャリアも重ねてきたという。

「新人の頃ヘマばっかりしていた僕が、その日の終わりの小さな打ち上げ『乾杯ビール』の瞬間だけチームの一員になれた気がしていたんです。あの瞬間、僕はビールに救われていたんだと思います」と、ビールがある場に携わるようになったモチベーションの原点を振り返る。

学生時代からスーツを着ない、モノ作りをする、家に帰れるという観点で仕事を選んできたという今井さん。照明の仕事はとても楽しく充実感もあったが、「年齢を重ねても力量のあるオペレーターやデザイナーになれるのは全体から見たらほんの一握り」と、5年間務め上げた職場を退職。

ビアガーデンでのアルバイトをしながら、ビール雑誌や専門書などで知識を身につけ、醸造所での仕事を探した。

求人誌やホームページを見ても募集が出ていない会社には電話したりして、なんとか働けないかと交渉。時には、「醸造所の見学だけでもさせてほしい」と半ば強引に押し掛けたこともあったという。

26才で杉並区のクラフトビール醸造所「高円寺麦酒工房」に出会い、醸造所の接客担当として採用してもらった。1年ほどして同社の醸造士の育成プログラムに参加させてもらうチャンスに恵まれ本格的に醸造を教われるようになった。

入社から2年したころには阿佐ヶ谷に大型醸造所が開設され、小規模タンクで自分の「スタイル」を作らせてもらえるようになったという。

「スタイル」というのはクラフトビールにおける味の種類のことでそのビールの特徴を表すものだという。今井さんが当時作っていたスタイルは、一般的なビールサイトなどでは「白ビール」と言われるホワイト系だったという。

ビール特有の苦みが少なくフルーティで爽やかな香りがあり柔らかな甘みとまろやかな味わいが楽しめることからクラフトビール初心者にも人気のスタイルだという。

醸造士の育成プログラムに参加しているメンバーがそれぞれに自分のスタイルを醸造し、お客さんに提供する機会に恵まれていたのだという。

醸造には通常2~3週間かかるので1人で醸造をしているよりも、複数人で並行して醸造し、互いに試飲したりしながら検証していった方が多くのスタイルとレシピを試せるのだという。

醸造の経験を積み重ねながら、会社も同時に成長。荻窪店開設に携わるようになり、ここでは店主兼醸造責任者として店内の内装をDIYで手掛けるところから任されるようになったという。同社が2014年に西荻窪に4店目を開店するタイミングで独立を決意。

同社で学んだ「地域社会に貢献できること」という社訓をなぞるように地元・千葉県に帰ってきて習志野市で起業。「むぎのいえ」開設に至っては店内の内装も自身で手掛けたという。

同店を訪れた客の多くが利用したがる「ロフト席」も今井さんが自身の手で作ったものだという。

ロフト席は男心をくすぐるVIP席として来店客の人気席に

スタッフは常連客から、福利厚生はビール飲み放題!?

スタッフの多くが「むぎのいえ」の常連客からの登用(という言い方で良いのか??)。もちろんビールが好きだし、ビールについてもアツく語れる。訪れてみるとわかるのだが、店の雰囲気がとってもフレンドリー。

今井さんとの会話が弾み、スタッフとも仲良くなり、この店を何回も訪れている内に自然と自分の居場所として同店の空間と空気を求めるようになるのだろう。

僕自身もこのお店でクラフトビールを飲んでいる時、とっても楽しいし、何よりもリラックスできる。働いているというよりも「酒場で仲間と一緒にいる」という雰囲気が作れるのは今井さんの人徳のなせる業だろう。

そして何よりうらやましいのは、ビール好きスタッフの福利厚生が「仕事中にビールを飲んでも良い」というルール。

今井さん曰く
「自分で飲んでいないとお客さんにビールを勧められないから」だそうだ。海外のビアパブで働いている人みたいで本当にうらやましい…

むぎのいえで醸造するクラフトビールのスタイルは20~30種程度だという

「むぎのいえ」で提供するフード類もビール好きが自分たちで考えるメニューなので、良い感じに塩気が効いていてどれもビールに合う。取材や打ち合わせで利用するたびに注文するのが楽しみで、メニューを見ていて目移りする。って書いていて、早く「マンボウ」おさまらないかな…と考えてしまう。

商店会の副会長という顔。若い人を起用する商店会の度量。

今井さんは、まだ若いのに商店会では専務理事も務めているという。

「地方」や「地域」を回っていると商店会の会長が何年も変わっていないことが老害になっているという事例をよくみかける。しかし、習志野市の谷津商店会では「若い人に運営をゆだねる」という文化があるようで会長も副会長も若い商店主が担っているのだという。

とっても良い感じの夜の風情
昼間歩いていても商店に活気があるので楽しめる

若い人の方が先の商売を考えた街づくりに興味を持つだろうし、新しい事を取り入れやすい。また、情報の発信に関しては若い人の感性が絶対に欠かせない。一般的には齢を重ねるごとに新しいチャレンジをするのが億劫になるし、失敗を恐れるようにもなるだろう。ほとんどの人が食も細くなっていくので商店会にやってくるお客さんの「食欲」を刺激する施策を打ちにくくなるのではないかと思う。

また、齢を重ねていくごとに自分の過去の成功事例に固執するようになりがちで、若い人のチャレンジを阻害する事も多くなっているようにみえる。

齢を重ねるのが悪いのではなく、齢を重ねることによって起こりがちな考え方や変化などを「特徴」として把握し、公共の利益の為に「適切な役回り」に徹する事が求められてくるものなのだと思う。

そうした意味においても谷津商店会のこの人事はとっても素晴らしいと感じる。

今井さん
「もっともっと地元に根付いたお店にしたい。自分が60代とか70代になった時に個人でやっているいい感じのブリュワリーとかビアパブが自分の町に数件、隣の町にも数件…自転車とか散歩がてらにはしごできるような未来にしたい。そんな文化を作りたい」

今井さんの描いている夢に、僕も相乗りしたいと思う。

若い人が自分の人生を賭けて、クラフトビールの醸造士という仕事を選び、ビアパブを経営し、それぞれの町でコミュニティを創っていく。そんな社会を彼なら実現してくれそうな気がする。

ならしのクラフトビール~むぎのいえ

店名:ならしのクラフトビール~むぎのいえ
住所:千葉県習志野市谷津4-6-33
TEL:047-429-8895
営業時間:16:00 〜 22:00 ※土・日・祝12:00 ~ 14:30 / 16:00 ~ 22:00 ※コロナ禍は変更有
定休日:火曜日
駐車場:近隣に有料駐車場有 ※お酒を飲む方は代行やハンドルキーパーを利用してください
[情報発信]
公式HP:~ならしのクラフトビール~ むぎのいえ|千葉県習志野市谷津にある自家製クラフトビールパブのお店なら~ならしのクラフトビール~ むぎのいえ (muginoie-beer.com)
Facebook:(1) 〜ならしのクラフトビール〜 むぎのいえ | Facebook
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Instagram:〜ならしのクラフトビール〜 むぎのいえ – Instagram • 写真と動画
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以上は 3 年前に書かれた内容です
主婦と高齢者で千葉を編集する
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2009年、千葉県船橋市でタウン誌「ふなばし再発見!!マガジンMyFuna」創刊、同時にローカルニュース「MyFunaねっと」配信開始。その後、2011年にみ...
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