写真家・北井一夫さんが手元の全作品を市に寄贈、愛用カメラやフィルムも
8/14(水)写真家・北井一夫さんが手元の全作品を市に寄贈
愛用カメラやフィルムも
日本を代表するドキュメンタリー写真家・北井一夫さん(79)が8月8日、自身の愛用カメラや手元にある全作品などを船橋市に寄贈するにあたり、船橋市役所での感謝状贈呈式に出席した。
北井さんが寄贈するのは、ビンテージプリント約400点、ネガフィルム、ベタ焼き、愛用のカメラ、作品掲載雑誌、原稿など。ビンテージプリントとは、写真家自身が撮影後まもなくネガフィルムから最初にプリントし署名した芸術作品のこと。
ビンテージプリントには、デビュー作「抵抗」(1965年)、「三里塚」(1971年)、「村へ」(1974~1975年)など、世界的にも高く評価されている芸術作品も含まれる。1980年代に船橋市の依頼で船橋の町や人々を撮影した「フナバシストーリー」のビンテージプリント約200点を船橋市は既に所蔵しており、市町村のコレクションとしては稀な規模となる。
北井さんは、1944(昭和19)、旧満州生まれ。日本大学芸術学部写真科で学んだ後、フリーの写真家として国内外で活躍。1971(昭和46)年に船橋市に移り住み、撮影活動以外に船橋市写真連盟の立ち上げに関わり、市写真展では初回から40年以上に渡り審査員を務め、船橋市の写真文化振興に尽力してきた。
昨年12月に船橋市民ギャラリーで久しぶりに披露された「フナバシストーリー」の作品展は、今年5月に「第40回写真の町東川賞」(北海道上川郡)で、長年に渡り地域の人・自然・文化を撮り続け、地域に貢献した写真家に贈られる「飛彈野数右衛門賞」を受賞。7月には「池田記念美術館」(新潟県南魚沼市)で大規模な作品展が開催された。
松戸徹船橋市長は「多くの貴重な品を保管させていただくことは大変意義があり、誇りに思う。今後は船橋市で外国からのオファーにも応じられるようにして、世界の写真文化に寄与していきたい。市民にもお披露目する機会を作りたい」と話した。
北井さんは「年齢的にフィルムや写真をどうしたらいいか。家族には迷惑をかけたくないしと悩んでいた。この3年の間に昔の写真の大がかりな展覧会が開かれ、自分の作品を見るうちに、撮った写真は撮らせてくれた人が気軽に見ることができるようにするのが良いと考えるようになった。関わりの深い船橋市でシステムを作り、保管して、市民以外にも役立ててほしい」と話し、「ホッとしているし、市には感謝している」と笑顔を見せた。